NPOが「体験」を売れる場所、Airbnb。

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私たちが暮らす地域社会にはどこにでも、数多くの課題がある。貧困や格差、教育や環境汚染にいたるまで、地域が直面している社会課題は挙げればきりがない。一方で、課題の数だけその解決に取り組んでいる人々がいるのもまた事実だ。

そうした様々な社会課題に立ち向かう起業家やNPOらにとって必要なのは、少しでも多くの人々に問題の存在と重要性を認識してもらい、解決に向けた支援をしてもらうことだ。

しかし、ほとんどのNPOにとって活動の継続や拡大に必要となる人的協力や資金を得ることは決して簡単なことではなく、結果として十分なソーシャルインパクトを生み出せずにいる。

そんなNPOらに対して新しい「寄付」の形を提案しているのが、世界最大のホームシェアリングプラットフォーム、Airbnbだ。

Airbnbは昨年11月、これまで手がけていたユーザー同士の部屋の貸し借りに加え、新たに「Trip」と呼ばれる新サービスを発表し、現地ならではのローカルな「体験」を望むゲストらと、部屋だけではなく「体験」も提供できるホストらをつなぐ機能の提供を開始した。

この「体験」ラインナップの一つとしてAirbnbが新たに始めたのが「Social Impact Experience(社会貢献体験)」というものだ。

「社会貢献体験」では、ゲストは現地で様々な社会課題に取り組むホストが企画した体験に参加できる。参加費用の寄付はもちろん、活動への理解や体験の共有を通じてホストの取り組みを支援することが可能となっている。

提供されている体験の種類も様々だ。ロサンゼルスのホスト、RONが提供するのはアーバン・ガーデニング体験で、ゲストの参加費用はロスの緑化を進める「The Ron Finley Project」に寄付される。また、サンフランシスコに暮らすホストのDoriは、同市の中心部にある最もホームレスが多い地域、テンダーロインのウォーキングツアーなどを提供している。こちらもゲストの参加費用は貧困問題などに取り組む「GLIDE Memorial Church」に寄付される。その他にも、デトロイトでホームレスとともに取り組むワークショップや老犬の世話にいたるまで、その内容は幅広い。

ゲストはこれらの体験を通じて、素晴らしい観光地として名を馳せる街が持つ、全く別の顔に触れることになる。自ら身をもって現地の抱える課題を体験し、理解を深めることで、次はその問題意識を共有し、人々に広めるアンバサダーとなる人もいるだろう。

一つの体験は数時間のものから数日間まで様々で、価格は一回につき100米ドル~250米ドル程度が相場となっている。Airbnbはこの「社会貢献体験」についてはゲストの参加費用をホストとなるNPOに全額寄付しており、一切手数料をとっていない。

この新しい「体験」の場は、地域の課題に取り組むNPOにとって自身の活動をプロモーションし、同時に寄付も得る絶好の機会ともなる。

NPOらが活動を広めるうえで何より重要なのは「共感」の創出だ。そして、共感を生み出す上で有効なのは「ストーリー」を伝えることだが、数あるストーリーテリング手法の中でも最も強烈なのは、やはり何といっても相手に自ら「体験」してもらうことだろう。

以前に「VRから始まる素晴らしい現実『VR for Good』」ではVRを通じてユーザーに現状を疑似体験してもらい、共感を得るという事例を紹介したが、Airbnbが提供するのはバーチャルリアリティではなく、文字通りのリアルな体験だ。

そう考えると、リアルな体験をそのままゲストに提供できるAirbnbの「社会貢献体験」は、地域の社会課題に真摯に取り組む起業家やNPOらにとって非常に有効なツールだと言える。ありきたりの観光ツアーでは決して得られない「体験」を求めるゲストに対し、NPOらは自分たちの活動そのものを商品として販売できるのだ。

また、この社会貢献体験はNPOやゲストだけではなくAirbnbにとっても重要な意味を持つ。同社はシェアリングプラットフォームの提供を通じて世界中の地域コミュニティにポジティブなインパクトをもたらすことを使命に据えており、この社会貢献体験プラットフォームの提供は、単なるCSRを超えた同社の事業理念そのものでもあるのだ。

「体験」という古くて新しいメディアが、社会をよりよくしようと取り組む人々とそれを支援する人々とを結びつける。そして、地域が抱える小さな課題が世界中からやってきたゲストを通じて世界中の人々にシェアされることで、今までになかったスピードで解決されていく。Airbnbの取り組みは、シェアリングエコノミーが社会課題を解決するインフラとなる可能性を感じさせてくれる。

この社会貢献体験、日本では、「非営利団体からの同意書」「支払い受取口座に非営利団体名義の口座を登録すること」という2つの条件を満たすホストは「体験」の登録申請が可能なので、興味があるNPO関係者の方はぜひトライしてみてはいかがだろうか?

【参照ページ】Airbnb「社会貢献体験」
【参照ページ】Airbnb「好きなことを世界とシェアしよう。」
【参照ページ】Airbnb「社会貢献体験のホストの要件は何でしょうか。」

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