米国は、多様多種な民族により形成された国である。しかしトランプ新大統領就任後、人種差別とも受け取れるような移民・難民者への極端な規制や、国境に壁を作るなど米国の素質そのものを覆すような政策が発表され、いま同国は大いに揺れている。
その米国で、差別や偏見の撲滅を訴えている「Love Has No Labels」キャンペーンが2月14日のバレンタインデーに合わせて公開した動画「Fans of Love」が話題となっている。Ad CouncilとR/GAが共同制作したこの動画は、北米で有名なキスカム文化を活用して制作された。キスカムとは、スポーツ大会の休憩中などに、カメラが無作為にカップルの観客二人を選出し、その二人にキスを促すという趣旨の余興である。しかし、その二人が常に恋人同士とは限らないため、ハグをするなど友好的なリアクションをして観客から喝采を浴びるというゲーム感覚の催し物だ。
このキスカムを取り入れた動画が、なんとも愛おしく、心を暖めてくれるものに仕上がっている。「愛にレッテルはない」という力強いメッセージが込められた人々の映像には、たくさんの愛が収められている。そして、その愛は男女間だけではなく、友人・同性・障害者同士、また異なる人種や国・宗教同士など、さまざまな愛の形を紹介してくれているのだ。
「偏見を無くそう。私たちは何者であるか以前に、みな人間であり、愛という名の下に偏見は片隅に置いてしまおう」というスローガンを掲げ活動を行っているのが、このキャンペーン仕掛け人のAd Councilだ。公共サービス広告の大手である同社は、国の多様な公共問題を改善するべく、R/GAのような非営利団体の企業と協働しキャンペーンを制作している。
偏見についての真実として、同社は「アメリカ人は、人々が公正に扱われるということに同意している。しかし、米国の多くの人々は依然として差別を受けていると感じている。その理由は、実際に私たちが無意識下で差別をしているということなのかもしれない。実は人間は、98%がこの意図しない差別を潜在意識下で行っているのだ。」と述べている。
そして、恐ろしいことに無意識の偏見は、人々がどのように扱われ、どのように相互作用するかに非常に影響しているという。それを止めるためには、自身を教育し、いかにフラットなマインドで人と接することができるかということが重要なポイントとなる。
今回のキャンペーンは米国向けに発信されたものだが、偏見や差別という問題は、我々日本人にも当てはまる課題ではないだろうか。近年日本では外国人が徐々に増えてきているとはいえ、まだまだ日本人率が圧倒的に多い。しかしこの日本人同士でさえ、人の形状や、障害の有無、美醜の差、または、価値観の違い、間違った情報などの偏見や先入観によりいじめや差別の問題があとを絶たない。
幸せな数分間を与えてくれる「Love Has No Labels」の動画は、人間はみな同じ。「あなたは日々、人に愛を持って接することができているだろうか?」そんな問いかけを沢山の愛の形と共に届けてくれる見事なキャンペーンだ。
【参照サイト】Love Has No Labels