屋根といえば、普通は上向きに尖った三角の形をしている。なぜなら、三角は雨風をしのいだり、日差しを調整したり、通気を良くしたりするのに一番適した形だからだ。世界遺産として知られる白川郷の合掌造りの屋根が急こう配なのも、積雪が多い同地域において雪下ろしの負担を減らし、水はけを良くするためだということは広く知られている。
それでは、気候が日本と大きく異なる地域ではどうなのだろうか。極端に暑く、また極端に雨が少ない地域でも屋根は本当に三角型がベストなのだろうか。この疑問に向かい合ったBMDesign Studiosが設計した凹状屋根を紹介したい。
これはイランのKerman 地方にある学校のデザインなのだが、写真を見ると明らかなように屋根はろうとのような形をしている。この形状であればどんなわずかな雨粒も蒸発する前に集められるというわけだ。この屋根によって学校は最大28㎥分の雨水を集められるとBMDesign Studiosは計算している。
国土の6~8割が乾燥地帯とも言われるイランでは、このデザインを他の地域でも用いることができそうだ。雨水を集める機能だけではなく、太陽光が直接あたる面積が少なく作られていたり、貯めた水が建物全体を冷やす仕組みになっていたりと、暑い地域ならではの工夫も多く見られる。
気候が違えば、服も建物も変わる。シンプルではあるが機能的で、ユニークなデザインが人目を引くこの屋根は、合掌造りと同様に地元の人々の知恵が詰まったグッドアイデアだ。
【参照サイト】BMDesign Studios
(※画像:BMDesign Studiosより引用)