大気汚染や環境破壊に対する懸念が高まっている昨今では、世界中の都市で環境への配慮を理由に自動車ではなく自転車の利用を推奨するプログラムが展開されている。
環境に優しいだけではなく、健康にもよく持ち運びもしやすい自転車だが、自転車の保有率が高いのはオランダやデンマークなどの平坦な地域が多く、坂の多い都市や地域では利用されにくいという課題があった。
その課題を解決し、坂の多い街でも自転車を多く使ってもらおうと、ユニークな取り組みを進めているサイクルショップがある。それが、アメリカのサンフランシスコにある電動自転車ショップのThe New Wheelだ。
The New Wheelは以前から坂道が多いサンフランシスコで電動自転車の利用者を増やすべく販売活動を行ってきたが、2017 年 4月から本格的なトレードプログラムを開始した。それは、顧客の中古車を買い取り、そこで顧客が得たお金で新しく電動自転車を購入してもらうというものだ。
このプログラムを行うにあたり、The New Wheelは中古車サービス会社のRoadster.comと提携しており、中古車の査定から買い取り、そして新しい電動自転車の購入まで流れを非常にスムーズに進められるフローを確立した。利用者はThe New Wheelのショップに車を持ち込んでから遅くても48 時間後には連絡が入り、車買い取りの手続きを済ますことができる。
電動自転車は坂道が多い街を走るうえではとても便利だが、通常の自転車と比べるとかなり価格が高いため購入を思いとどまる人も多い。しかし、中古車を売って得たお金を活用できればそのぶん購入に踏み切りやすくなる。しかも電動自転車の購入は必須ではないため、利用者は待っている間に実際に試してみたりしたうえで購入を判断できて安心だ。
環境への負荷が高い自動車を手放して、その代わりに自転車の利用を促すプログラムなので、ただ単に自転車を販売するだけよりも環境にもたらす好影響は大きい。また、中古車の買い取り金額のうち100ドルは地元のサイクリング協会に寄付される仕組みとなっているため、その点でも自転車利用の活性化に一役買うことになる。
「自動車から自転車へのアップグレード」というと新鮮な響きがあるが、実際に試してみたら案外そのフレーズもしっくりくるかもしれない。普段の移動距離や目的などを鑑みて、自分にとって最適な移動手段を選択したいものだ。
【参照サイト】The New Wheel