ふいに寂しさがこみ上げてきたとき、人は人の温もりに触れたいと願う。言葉で言い表せない欠乏感を何が埋めてくれるだろう。大切な人が遠くにいて会えないとき、人はじっと孤独を噛み締めるしかないのだろうか。
2015 年に設立された会社Parihugは、動物型のぬいぐるみPariを通して大切な人の温もりを肌で感じることができる仕組みを開発した。まずこのぬいぐるみを2つ用意して、1つは自分が持ち、もう1つはあなたの大切な人に渡す。片方の人がPariをぎゅっと抱きしめると、たとえどんなに離れた所にいても、もう1人が持つPariにおだやかな振動が伝わる。相手があなたのことを想っているという確かな手ごたえが、触覚を通じて伝わってくるのだ。
さらに両サイドの人が同時にPariを抱きしめているときは、互いの心臓の鼓動も相手に伝わる。まるで愛する人がすぐそこにいるかのような臨場感。テキストメッセージや映像では伝えきれない温かさだ。ぬいぐるみという商品ではあるが、利用者は子どもに限らない。仕事が忙しいお母さんとその子ども、遠距離恋愛中のカップル、遠くに住む親戚など、幅広い年齢層の人が利用できる。
Pariはインターネットに接続することで利用できる。簡単なセットアップでPariをwifiに繋げ、Parihugのアプリをダウンロードすれば準備完了。アプリに大切な家族や友人を登録し、相手がどこにいるかチェックしながらリアルタイムでハグを届けられる。本当に近しい人とだけ繋がれるプライベート空間だ。
通信技術の発達により一昔前と比べたら格段に人と繋がりやすい時代にはなったし、寂しさそのものに蓋をする術も、全く関係ないことに浮かれて寂しさを紛らわしたり忘れたりする方法も、いくらでもあるのだと思う。ただ、Pariを通して人と人とが抱きしめあうという、ストレートでプリミティブな愛情表現に触れると、私達はふっと我に返るのではないだろうか。他でもない、自分はこれを求めていたのだ、と。
【参照サイト】PARIHUG: Hug Loved Ones From Anywhere In The World
(※画像:Parihug Kickstarterより引用)