あなたは誰かがいじめられているのを見たとき、止めに入ることができるだろうか。良識ある大人として、子どもの間違いを正すことができるだろうか。口で何とでも言える自己申告ではなく、米ファーストフードチェーンのバーガーキングは店内で社会実験を行い、何%の人が実際に学生のいじめを止めに入るかを観察した。その結果は、わずか12%だ。
実験のセッティングはシンプルで、役者に店内でいじめを行わせ、それを見た本当の客が行動を起こすかどうか隠しカメラで観察するというものだ。たとえわずかでも被害者のために立ち上がる人がいたという事実は救いになり、最後の「あなたもいじめを止めよう」というメッセージに繋がる。そしてこの動画が秀逸なのは、店員が同時並行でバーガーキングのメイン商品であるハンバーガー「Whopper Jr.(ワッパージュニア)を「いじめる」演出を入れている点だ。
具体的に言うと、注文を受けた店員が厨房でWhopper Jr.を自らの拳で叩き潰す。席について潰れたバーガーを見た客は、店員に文句を言いに行く。いじめられたWhopper Jr.に声を上げた客は95%もおり、12%との差は歴然としていた。「おや、こっちのいじめに対してはすぐ怒るんですね?」と皮肉が効いているわけだ。この2つの反応を対比させるという目のつけ所には考えさせられる。
人は物事を非難するのが結構好きな割に、こうした「人をいじめる」という明らかな悪からは不思議と目を背けるのは実に興味深い。その理由は、他人の尻馬に乗って非難することはできても第一声は発したくないという臆病さか。それとも、客の立場で逆らわなさそうな店員に対してのみ毅然と振る舞える己の卑小な本性が、弱いものをターゲットにするいじめっ子の姿と被って目を逸らすしかないのか。まるで自分を見ているようで。
何かを確実に浮き彫りにしているバーガーキングの動画には、安易な道徳教材に走らない気概と狡猾さがある。限られた時間の中で不快指数の高い場面を多く入れるリスクをとってでもバーガーキングには「いじめ撲滅」という際立たせたいメッセージがあったし、同時に商品のひとつであるWhopper Jr.をしっかり印象づけることにも成功している。かっこいいぞ、バーガーキング。
【参照サイト】No Bully.org