残飯などの生ゴミを発酵させ、そこからメタンガスを生成する技術は、今やそれほど目新しいものではなくなった。しかし、この仕組みを各家庭に普及させるとなると話は別だ。もしバイオガスを調理用ガスに転用することができれば、これ以上ない理想的なエコサイクルが達成されるのだが、実際にそれを行っている家庭はどれほど存在するだろうか?
このエコな循環は、バイオガスどころかガス会社に料金を払うことすらできない人々が多く存在する発展途上国にとっては、なおさら理想的な話しだ。彼らはガスの代わりに木々を伐採し、燃料として使う。枝を切り落とすのではなく、幹をまるまる1本伐採してしまうのだ。この繰り返しが森林破壊につながっている。
また、「ガスがない」ことの弊害はもう一つある。それは、子供たちを学校に行かせる余裕がなくなるという点だ。薪を取る作業は重労働であり、そしてこれはもっぱら子供たちの仕事である。貧しい地域では本来学校に通うはずの少年少女がこの仕事に駆り出される。しかも森林伐採を続ければ、その地での農業が成立しなくなり、貧困がさらに深刻化する。だからこそ、本来なら発展途上国でこそバイオガス普及が求められるはずなのだが、多くは「大掛かりな装置を置く余裕がない」という理由ですぐに頓挫してしまう。
この問題を解決するべく、イスラエルのスタートアップが開発したのが「HomeBiogas 2.0」というユニークな装置だ。バイオガスを調理用に使うというコンセプトの製品で、微生物が生ゴミを分解する際に放出するガスを集め、それを有効活用する。分解後の余りカスは液体肥料になるから、無駄なものが一切発生しない。
HomeBiogas 2.0の最大の特徴は、装置の構造にある。HomeBiogas 2.0は空気で膨らませることができ、設置に一切コストはかからない。水のレジャーに使うゴムボートを膨らませるのとまったく同じ感覚で使用でき、不要なときは折り畳んで収納できる。
HomeBiogas 2.0は、生ゴミの発酵が始まると1日に3時間分の調理ができるだけのガスを生成できるとしている。この開発者は製品を発展途上国で普及させることを計画しているようだ。その前段階として、ケニアとプエルトリコで活動を行うと公約している。HomeBiogas 2.0はクラウドファンディングサイトのKickstarterに出展され、すでに目標額を大幅に超える資金を集めている。
生ゴミを分解してバイオガスを発生させ、そのガスを利用して調理する。この行動が当たり前になれば、途上国の人々は燃料のための森林伐採をやめ、子供たちは重労働から解放されて教育へのアクセスを手にする。HomeBiogas 2.0は、環境と貧困という二つの課題を解決する可能性を秘めたアイデアだ。
【参照サイト】HomeBiogas 2.0: Transforms Your Food Waste Into Clean Energy-Kickstarter
(画像:Kickstarterより引用)