みんながそれぞれ好きな仕事をしながら、楽しく生きられる社会を作ろう。そんなミッションを掲げるのは、起業家やフリーランサーたちが集まるシェアオフィスやシェアハウス運営大手の米WeWork社だ。彼らが次に仕掛けるのは、子どもの教育革命である。
同社は、子どもたちの起業家精神を育てるための私立小学校を、今秋WeWorkニューヨーク本社内に建設予定だ。開校に先立ち、7人の子どもたちに向けた試験授業もすでに始まっているという。
「起業が大人だけのものだなんて、いったい誰が決めたのかしら?」WeWork共同創始者のレベッカ・ノイマン氏は、Bloombergの記事でそう語る。「小さいうちから、自分の好きなことや情熱に気づき、それを形にするためにどうしたらいいのか、ビジネスを通して学ぶのはとても大切なことよ。」彼女の子どもは、試験的授業を受けている子どもたち7人のうちの1人だ。
生徒たちは、週に1日をWeWork社が所有する60エーカーの農場で、残りをニューヨーク本社内の校舎で過ごす。そこで、WeWorkの社員や顧客である起業家たちから直接ビジネスの授業を受けるのだ。「教育に革命を」というのが本プロジェクトの核だが、それは従来の教育制度をまったく無視するというわけではない。従来の学校のように、生徒たちは算数や国語などの科目で、平均点以上を取ることが求められる。違いはその教育メソッドだ。
「たとえば農場での1日では」レベッカ氏は続けた。「生徒たちは算数を、自分たちで作った商品を売るスタンドの運営の中で学ぶの。国語は、植物のサイクルについて書かれた文献を読みながらね。」ただ教室に座って、頭の中で考えるだけの授業とは違う。同氏が目指すのは、五感を使い、実践を通して学ぶ教育なのだ。
授業内容は、他にも新規ブランドの作り方、効果的な販促術などから、ヨガ、演劇に至るまで多岐にわたり、なおかつ本格的だ。子どもたちが好きなことや学びたいことに応じて、その分野のプロのサポートが得られるという環境である。
試験授業を受ける子供のうちのひとりである8歳のニアちゃんは、農場のスタンドで販売するためのTシャツデザインにおいて、その適性と情熱を発揮。WeWork社が提供するシェアオフィスの利用者であるファッションデザイナーに、早速弟子入りが決まったという。
学校の創立について、レベッカ氏の夫であるアダム・ノイマン氏は「小さいうちからお金のことばかり教えてけしからんという声もあった。でもそうじゃない。本来子どもたちはとてもクリエイティブで、起業家精神を持っているものなのだ。子どもたちのそういう素質を義務教育でとことん封じ込めて、大学卒業後には若者みんながクリエイティブであることを求める……そんな社会の風潮には、心から疑問を感じた。」と述べている。
ノイマン夫妻の目標は、3歳から高校3年生までが学ぶ学校を、世界各地のWeWork支社に併設すること。名付けて「WeGrowプロジェクト」は、一生役立つ実践的な教育メソッドを世界中に広げていくことが目標だ。初年度である今年はまず、3歳から4年生までの生徒を65人集める。ターゲット層を広げるべく、学費に関しても現在協議中だ。
レベッカ氏はBloombergの取材に対し、人々がどこでも自分の好きなことに打ち込める人生を送っていれば、仕事と人生、あるいは家と会社の間には本来、仕切りがある必要はないのだと語る。そしてこう続けた。「私たちはみんな、自分にはどんな才能があるのか、ちゃんと知っているべきよ。それをどう使って、世の中に貢献できるかということもね。その大切さを、私は世界中の人々に伝え続けていきたい。それが私の仕事であり、人生だから。」
【参照サイト】WeWork Is Launching a Grade School for Budding Entrepreneurs
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