風力発電は地球に優しいエネルギーだ。こう考える人は多いが、実はその持続可能性については否定的な声もあることはご存知だろうか。
風力発電機のローターの直径は約45m。この巨大装置の耐久性を保つためには、莫大なエネルギーと時間を要する。また、20年から25年間で寿命を迎え、その後発電機の大半がリサイクルされずに廃棄処分されてしまうのだ。現在の課題は、エネルギー効率や持続可能性をいかにバランスよく開発していくかである。
今月、アメリカのヴァンダービルト大学の環境土木工学教授Doug Adams氏が率いるチームが、この課題解決の1つになるであろう研究を発表した。この研究チームが発案するのは、「エリウム」という新しい樹脂を使い、生産プロセスの効率化を行うことだ。
研究チームのパートナーであるArkema社が開発したエリウム(Elium)は、自力で発熱し、変形する樹脂である。通常、タービンを強化するための樹脂は加熱して変形させる必要があるため、大量のエネルギーを消費するという欠点があるが、タービンにエリウムを使用することでこれを解決できるようだ。タービンの交換が必要なときは、エリウムを溶かして再利用できる。
世界における電力需要の高まりとともに、これまで風力発電業界は大きな成長を遂げてきた。アメリカ風力発電協会によると、現在アメリカで稼働している風力発電機は5万2,000基以上あり、風力発電関係の雇用は2016年に20%増加したという。この業界の成長によって、風車の製造効率や仕事訓練、およびリサイクルなど、風力発電プロセス全体における一層の改革が必要になってきた。
こういった流れの中で発表された今回の研究は、製造コストを削減し、タービン使用中におけるエネルギー消費の削減や使用後のリサイクルに貢献するものだ。研究にあたったAdams教授は「この合成材技術は、風力発電の持続可能性をめぐる議論を止めうる。」と語る。
研究チームの次のステップは、発電機のテスト用サイズから実際の風車の翼の大きさにスケールアップすることだ。リサイクル可能な新樹脂製の翼を使って、風力発電をよりエコにするという試み。今後のさらなる研究開発が期待される。
【参照サイト】New recyclable resin makes wind turbines much more sustainable