ブロックチェーンは社会を変えられるのか?スタンフォードが世界193プロジェクトを調査

Browse By

いま、世界で最も注目され、未来が期待されている技術の一つ。それが「ブロックチェーン」だ。もともと仮想通貨「ビットコイン」の基盤技術として生まれたこの分散型台帳技術は、いまや金融業界を超え、あらゆる業界にて活用が検討されている。

高い透明性と改竄リスクがない安全性、中央集権システムを介さないことによるコストメリットなど、様々な魅力を兼ね備えたブロックチェーンは、これまで解決が困難だったあらゆる社会課題に対する新たなソリューションとしても期待されており、すでに世界中でユニークなブロックチェーンプロジェクトが展開されている。

一方で、ブロックチェーンに対する過度な期待は実態との乖離を生みつつあり、最近ではHype(誇大宣伝)と揶揄されるプロジェクトも多い。実際のところ、現在のブロックチェーン技術はどこまで実用化が進んでおり、私たちはどこまでブロックチェーンに期待をしてよいのだろうか。

そんな疑問に応えるべく、スタンフォード経営大学院のソーシャルイノベーションセンターとRippleWorks Foundationは、ソーシャルインパクトの創出を目指している世界中のブロックチェーンプロジェクトを調査し、「Blockchain for Social Impact: Moving Beyond the Hype」と題するレポートを公表した。

同レポートによると、社会課題の解決に向けたブロックチェーンの活用はいまだ初期段階にあるものの、徐々に成果が形となって現れる日は近づきつつあるという。調査の結果、対象となった193のプロジェクトのうち、34%が2017年以降に開始したプロジェクトであり、74%はいまだにパイロットフェーズか構想段階にある一方で、55%のプロジェクトは2019年の初期までに何らかの成果を生み出すことを想定していることが分かった。

また、193のプロジェクトのうち20%はブロックチェーンでなければ解決不可能であった課題に対してアプローチしており、86%はブロックチェーンの活用により既存のソリューションに大きな改善がもたらされるとしている。

具体的な事例としては、銀行口座を持たない人々や難民、貧困地域に暮らす小規模事業者など金融サービスの外に置かれている人々に対してブロックチェーンを通じてデジタルIDを提供し、フィナンシャル・インクルージョンの実現を目指しているアメリカのBanQuなどが挙げられている。

プロジェクトやイニシアチブの割合を業界別に見てみると、最も多かったのがヘルスケア(25%)業界で、次いでフィナンシャル・インクルージョン(13%)、エネルギー・気候・環境(12%)、慈善活動(11%)、民主主義・ガバナンス(11%)と続いている。

ヘルスケア領域のプロジェクトとしては、ハードウェアセンサーとブロックチェーンを活用してサプライチェーン上における医薬品の温度を管理・追跡するチューリッヒ発のModum.ioなどがある。同社のセンサーはすでに大量生産段階に入っており、まもなく欧州で試験的な導入が始まる予定だ。

民主主義・ガバナンスの領域では、バルト三国の一国であるエストニアがすでに2008年からブロックチェーンを活用した政府システムの構築を行っており、現在では行政サービスの99%がe-Estoniaと呼ばれるオンラインサービスにより手続き可能となっている。

なお、ブロックチェーンの用途として多かったのはデータ記録・認証(26%)、決済・送金(25%)で、活用のメリットとして最も多く上がっていたのはリスク軽減や詐欺防止(38%)、効率の向上(24%)だった。

今回の調査からは、すでに世界中のあらゆるセクターで、社会が直面する課題の解決に向けて様々なブロックチェーン活用プロジェクトが進んでいることがよく分かる。上記で挙げた以外にも、農業や土地の権利、教育や人権、水と衛生にいたるまで、その領域は幅広い。

同レポートは、ブロックチェーンが社会へのインパクト創出にどれだけ貢献できるかを判断するにはまだ時期尚早であるものの、すでにいくつかのプロジェクトは形となりつつあり、ブロックチェーンの進化に注目しつつ、解決しようとしている目の前の課題にどのようにブロックチェーンが活用できるかを理解することが重要だと結論づけている。

今回対象となった193のプロジェクトのうち、どれだけのプロジェクトが花を開かせ、世界をよりよい方向へと変えていくのか。これからの展開が楽しみだ。

【参照サイト】Blockchain for Social Impact: Moving Beyond the Hype
【関連記事】ブロックチェーンで社会をもっとよくするアイデア10選