【まとめ】ブロックチェーンで社会をもっとよくするアイデア10選

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テクノロジーで金融の仕組みの変革を目指す「Fintech(フィンテック)」分野において、今もっとも注目されている技術の一つ、それが「ブロックチェーン」だ。今年に入り10倍以上に価格を上げ、日本でもとても話題になった暗号通貨「ビットコイン」の基幹技術として発明されたブロックチェーンは、一言でいうと分散型の台帳技術だ。

データ改ざんが難しく、高い信頼性が求められる金融取引も可能にするブロックチェーンは、世界中で情報の自由なやりとりを可能にしたインターネットに例えて「価値のインターネット」と評されることも多い。

過去全ての取引履歴を遡って追跡することができるという透明性と、仕組み上データ改ざんが難しいという信頼性の2つを強みとするブロックチェーンは、その特徴を活かして金融業界だけではなく幅広い産業、領域においても活用が期待されている。

IDEAS FOR GOODでも今年はブロックチェーンを活用して社会課題を解決しようとするユニークな取り組みを紹介してきた。そこで、ここでは今年に取り上げた記事を一挙にまとめてご紹介したい。

ブロックチェーンで難民を救う

今年の6月、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は昨年末時点における世界全体の難民数が過去最高の6560万人に上ったと発表した。この難民問題の解決に向けて、ブロックチェーンを活用して取り組んでいるプロジェクトがある。

01. 難民にデジタルIDを付与する「Taqanu」

ブロックチェーンを活用してデジタルIDを発行。難民でも銀行口座を作れるアプリ

ドイツのスタートアップ「Taqanu」が提供するのは、ブロックチェーン技術を活用してデジタルIDを発行し、身分証明書やパスポートすら持たずに祖国から避難してきた難民の人々が、移民先でも銀行口座を開設できるようにするというアプリだ。これまで、身分証明書を持たない難民が移民先の国で銀行口座を作ることが難しかった。金融サービスへのアクセスが閉ざされることは、職探しや住居探しといった生活を始めるためのあらゆる行動が制限されることを意味する。Taqanuはこの問題をブロックチェーンで解決し、難民が新しい国で新しい人生を歩むためのはじめの一歩を支援している。

02. 難民のためのプリペイドマスターカード「MONI」

難民のためのブロックチェーンを活用したプリペイドマスターカード

フィンランドのスタートアップ企業MONIが提供するのは、ブロックチェーン技術を活用した難民向けのプリペイド式マスターカードだ。コンセプトはTaqanuと非常に近く、ブロックチェーンを活用することで銀行を介さずともPeer to Peerで知人などから直接お金を振り込んでもらい、ATMで現金を引き出すことを可能にした。このマスターカードは難民にとって将来のあらゆる可能性を拓く大事な一枚となる。

ブロックチェーンとシェアリングエコノミー

ブロックチェーンの活用が期待されている領域の一つがシェアリングエコノミーだ。見知らぬ個人同士が自由にモノやサービスのやりとりをするシェアリングエコノミーの概念と、中央集権システムを必要とせずトラストレスに安全な取引ができるブロックチェーン技術との相性は非常によい。既にシェアリングエコノミーの世界でもブロックチェーンを活用した先進的なプロジェクトは複数始まっている。

03. 太陽光発電のシェアリングエコノミー「Power Ledger」

ブロックチェーンが実現する太陽光発電のシェアリングエコノミー

オーストラリアのスタートアップ企業、Power Ledgerが同国最大のブロックチェーン企業、Ledger Assetsと協力して始めたのは、ブロックチェーン技術を用いて個人同士が自身の屋根に設置したソーラーパネルで発電した電力を自由に売買できる仕組みのトライアルテストだ。電力会社を介さずとも個人が自由に電力を売買できるようになれば、中間コストがなくなるぶん発電する家庭にも電力を購入する家庭にも経済的メリットが生まれ、再生可能エネルギーの普及をより後押しする可能性がある。

04. ビットコインで太陽光を買う「The Sun Exchange」

アフリカにもっとソーラーパネルを。ビットコインで太陽エネルギーを買う「The Sun Exchange」

南アフリカでは、クラウドファンディングのように誰でも1枚からソーラーパネルを購入することができるプラットフォーム「The Sun Exchange」の開発が進められている。The Sun Exchangeでは大規模な設備投資の必要がなくてもビットコインを用いて小口の太陽光発電投資が可能で、アフリカにおける持続可能なエネルギーインフラの構築に貢献することができる。

05. シェアリングを支えるスマートコントラクト「Slock.it」

シェアリングエコノミーを加速する、ブロックチェーンを活用したスマートコントラクト

ドイツのスタートアップ企業、Slcok.itが開発しているのは、あらゆるPeer to Peerの取引に活用できるブロックチェーン技術を用いたスマートコントラクトだ。Slock.itは第三者や仲介者がいなくても決済可能なスマートロックとして、Airbnbなどホームシェアリングの分野で活用が期待されるドアの開閉や、バイクシェアリングの分野における自転車のキーロック開閉にいたるまで、あらゆるシェアリングエコノミービジネスの現場で活用が期待されている。

ブロックチェーンでサプライチェーンを透明化

過去全ての取引を遡って追跡できるというブロックチェーンの透明性を、サプライチェーンのマネジメントに活かそうとする動きも世界中で始まっている。原材料の調達から消費にいたるまで一連のサプライチェーンがグローバルに拡散し、より複雑化している昨今においては、商品の安全性を担保し、消費者の信頼を獲得するうえでは「トレーサビリティ(追跡可能性)」が重要なテーマとなる。そこで活躍するのがブロックチェーンなのだ。

06. 豚肉のサプライチェーンを透明化するウォルマート

ブロックチェーンでサプライチェーンを透明化。ウォルマートの挑戦

小売世界最大手のウォルマートは、中国の清華大学、IBMと共同で、豚肉の生産から小売までの流通経路をブロックチェーンに記録し、食品の動きをリアルタイムに追跡できるシステムの構築を進めている。消費者の「食の安全性」に対する懸念が高まるなか、ブロックチェーンにより店頭に並ぶ豚肉がどこから来てどのように加工されたのかの記録を全て遡って見られるようになれば、消費者の信頼獲得はもちろん、サプライヤーに対して公正な慣行を促す強力なドライバーにもなるはずだ。

ブロックチェーンでエシカルな行動を促進

ブロックチェーンを活用し、より社会や環境にポジティブなインパクトを生み出そうとしている企業が得をする仕組みを作ろうする動きもある。ブロックチェーンが持つ透明性や暗号通貨というインセンティブの力を利用して、人々の行動をソーシャルグッドな方向へと導こうとするユニークなプロジェクトだ。

07. エシカル消費で暗号通貨がもらえる「CarbonX」

気候変動にブロックチェーンで立ち向かう。エコな消費をすると報酬がもらえる「CarbonX」

カナダのCarbonXが取り組んでいるのは、消費者が環境に優しい購買行動をとればとるほど報酬を得られるプラットフォームの構築だ。同社はまずREDD+という気候変動の抑制に向けた国際メカニズムの規定に基づきCO2の排出権を購入し、それを「CxT」と呼ばれる換金可能なトークン(暗号通貨)へと転換する。次に、CarbonXは発行したCxTトークンを小売企業やメーカーなどに販売する。そして、CxTトークンを購入した企業は、よりCO2排出が少ない製品やサービスを購入する消費者に対してCxTトークンを付与することで、消費者のエコな選択を動機づけするというシステムだ。

08. エシカルICOプラットフォーム「Chainstarter」

社会を変える起業家を応援。ロンドン生まれのエシカルICOプラットフォーム「Chainstarter」

ロンドン発のエシカルICOプラットフォーム「Chainstarter」は、ブロックチェーン技術の普及に貢献するかどうか、社会にとっていい影響をもたらす「エシカル」なプロジェクトかどうかなどを基準に起業家のICO(Initial Coin Offering)を支援するプラットフォームだ。独自の基準で信頼性が低いICOプロジェクトから投資家を保護しつつ、ICOに参画する投資家の情報もオープンにすることでマネーロンダリング目的などの不正な資金の流入も防ぎ、コンプライアンスを重視した倫理的な資金調達を支援している。

ブロックチェーンがアートを変える

価値を生み出した人々が、中間業者などに利益を搾取されることなく、適正なリターンを享受できる世界。それはブロックチェーンが目指す理想の世界であり、「価値のインターネット」のあるべき姿でもある。その理想を実現するべく、特に価値の配分が適正に行われてこなかったアートの世界ではブロックチェーンを活用した革新的なプロジェクトがいくつも生まれている。

09. アート作品を自由に売買できる「Maecenas」

ブロックチェーンでアート作品と投資家を結びつけるプラットフォーム「Maecenas」

イギリスに本拠を置く「Maecenas」は、ブロックチェーン技術を用いてアート作品と投資家を結びつける新しいプラットフォームだ。Maecenaは、これまで閉鎖的だったファインアートの世界にブロックチェーン技術を用いて透明性と流動性をもたらしている。プラットフォーム上では投資家と作品所有者はわずかな手数料を支払うだけで自由にアート作品の取引ができる。アート作品をさながら上場企業の株のようにタイムレスに取引できるプラットフォームは、これまでアート市場の閉鎖性を利用して利益を搾取していた中間業者を排除し、投資家にはより多くのアート作品に触れられる機会を提供し、アーティストにはより多くの利益をもたらすことを可能にしている。

10. アートに関わる人に公平なリターンをもたらす「Artlery」

ブロックチェーンでアートに関わるみんなをハッピーにするアプリ「Artlery」

米国ボストンに本拠を置く「Artlery」は、ブロックチェーン技術を活用してアーティスト、ギャラリー、消費者などアート作品に関わるステークホルダー全員が、アート作品の販売から生まれる収益を公平に受け取ることができるアプリを開発している。ユーザーがパトロンとならなくてもSNSなどで気に入った作品をシェアし、作品が売れれば報酬の一部を受け取れるといった仕組みを導入している点もユニークだ。

まとめ

いかがだろうか?上記はあくまで世界中で進んでいるプロジェクトのほんの一部に過ぎないが、ブロックチェーン技術は金融業界だけではなく幅広い業界の常識を変え、社会課題の解決に向けた革新的なソリューションを提供する可能性を秘めていることが分かるのではないだろうか。IDEAS FOR GOODでは今後もブロックチェーンを取り巻く最新動向を注視しながら、ソーシャルグッドなプロジェクトを積極的に紹介していきたい。

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