旅と聞いて、あなたは何を想像するだろう。癒し、未知の世界の発見、人との触れ合い。そして旅においては、どんな宿に泊まるかも重要だ。あなたはどんな基準で宿を選んでいるだろうか。
世界的展開を行うヒルトン・ホテルズ&リゾートは2018年5月、72,000人の宿泊客を対象にアンケートを行った。その結果、社会性、環境保全、倫理性がホテルを選ぶ際の重要な基準となっていることがわかっている。33%の人がこれらの点を予約前に確認するほか、25歳未満の若い世代のうち44%が基準を満たしているか積極的に調べる傾向にあった。
旅行業界は成長を続けており、環境保全や社会への貢献も求められている。IDEAS FOR GOODでもこれまでに、等身大の社会貢献を提案する渋谷の「TRUNK(HOTEL)」、自らエネルギーを生み出すノルウェーのホテル「Svart」、ベトナムの大規模エコリゾート「Mui Dinh Eco-Resort」、排ガス・ゴミ・貧困ゼロのフィリピンの「NAUTILUS ECO-RESORT」などをご紹介してきた。
そして、今回ヒルトンホテルは、人間の活動が環境に与える負担を指標化したエコロジカル・フットプリントを2030年までに半分にし、社会的投資を倍増させることを発表した。
ヒルトンホテルが提案する「目的の旅(Hilton’s Travel with Purpose)」の一環で、国連の持続可能な開発のための2030アジェンダの促進に沿ったものだ。これにより、ヒルトンホテルは、科学的に目標を定めた初めての大規模ホテルとなる。
ヒルトンホテルが定めた、2030年までに環境負担を減らす目標は以下の通りだ。
- 二酸化炭素排出を61%削減する
- 水使用とゴミを50%削減する
- プラスチック製ストローを廃止する
- 持続可能な肉や魚介類を調達する
- 綿製品を調達する
- 全ヒルトンホテルで石鹸リサイクルプログラムを実施し、石鹸を埋立てゴミにしない
そして、社会的投資を通して実現する目標は以下である。
- 地元の小規模経営のサプライヤーを倍増させる
- 地元の団体や学校と協力して、女性や青少年を応援するプログラムへの投資を倍増させる
- 従業員で1000万時間のボランティアを行う
- 自然災害救助への資金援助を倍増させる
- 強制労働および取引根絶のため、ヒルトンチェーンにおける人権教育を促す
目標の達成が実際に行われるかどうか、これから“LightStay“という実績測定システムを用いて、世界の5,300のヒルトンホテルにおける環境への影響を計算、分析、レポートしていくという。
ヒルトンホテルは、これまでも業界の環境リーダーであった。2008年以来、ヒルトンホテルは二酸化炭素排出量とゴミを30%削減し、エネルギーと水の消費を20%削減することにより、10億米ドルの節約に成功している。
ヒルトンホテルのCEOであるNassetta氏は、こう語っている。「ヒルトンホテルはこれまで100年近くにわたり、ホテルを建てる地域の社会に良い影響を与えるというポリシーを持って経営を行ってきた。そして旅行全盛期である今、このホテルが次世代にとって活気あふれる場所になるように、リーダーシップを発揮していきたい。」
世界観光機関(UNWTO)のPololikashvili 事務総長は、「世界観光機関は、ヒルトンホテルの持続可能性への挑戦を称賛する。これは、持続可能な旅行を世界的に促進するという われわれの目標と同じだ。ヒルトンはわれわれのパートナーで、サービス業界のなかでも顧客の意識向上に努めている。」と語る。さらに、世界野生生物基金 のBonini副会長も「企業は、気候変動の解決において不可欠な役割を果たすだろう」と述べている。
いま注目されている、気候変動解決における企業の役割。ヒルトンホテルの今回の発表は急成長を遂げる観光業界において、大きな道しるべになるだろう。そして、わたしたち旅行者一人ひとりも、環境への意識を新たにしていきたい。
【参照サイト】Hilton Commits to Cutting Environmental Footprint in Half and Doubling Social Impact Investment