クリーンエネルギーの筆頭である太陽エネルギーは現在、世界中でさまざまな技術開発が行われている。IDEAS FOR GOODでも、これまでオランダの海の上の太陽光発電所や、オーストラリアの夜でも発電する大規模な太陽光発電所、雨粒をエネルギーに変える太陽電池などをご紹介してきた。
2020年までにクリーンエネルギー価格が低下することも予測されており、太陽エネルギーのさらなる可能性に期待が高まるが、太陽光発電には短所もある。日照時間が少ない日に発電量が制限されることだ。
この課題を解決すべく、ブリティッシュコロンビア大学の研究チームが、バクテリアを使って曇りの日も効率的に発電する太陽電池を開発した。ジャーナル「Small」の最新号において発表されたこの発電方法は、植物の光合成にヒントを受けている。安価で持続可能性に優れており、北米や北欧などの地域に有効だ。 光のあまり当たらない場所でも、光が十分にある場所とほぼ同等の効率で機能するという。
これまでも、光合成のプロセスを利用した太陽電池の研究開発は行われてきたが、バクテリアが光合成のために使う天然色素の抽出が中心である。従来の方法は高価で複雑であり、有害な溶媒を使用するため、色素の質を低下させる恐れがあった。
そこで今回、ブリティッシュコロンビア大学の研究チームは、色素をバクテリアに残して、大腸菌を遺伝操作することで、大量のリコピンを生産する方法を開発した。トマトなどに多く含まれる赤色色素のリコピンは、実はエネルギー変換のために大変有効なのだ。
研究チームは半導体素材として作用する鉱物にバクテリアを混ぜ、それをガラス表面に塗って実験をおこなった。すると、既存の他製品のほぼ2倍にあたる、1平方センチメートルあたり0.686ミリアンペアの電流が計測された。これは、生物を用いた太陽電池の電流としては最高記録となる。
同大学のYadav教授は、「コスト削減の見積もりは困難だが、このプロセスによって色素生産コストを他方法の約1/10に低減できると考えている。バクテリアを殺さないプロセスは、色素を無制限に生産できるためだ。また、鉱山や深海の踏査、および他の光が弱い環境における、生物を用いた素材として適用できる可能性が大いにある。」と語る。
今後、多くの場面での適用が期待される、バクテリアが入った太陽電池。これからのさらなる研究開発が楽しみだ。
【参照サイト】Bacteria-powered solar cell converts light to energy, even under overcast skies
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