都心から1時間弱に、世界初の廃プラから生まれる水素発電型リゾートホテルが誕生

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神奈川県川崎市。かつて石油化学コンビナートが立ち並び、京浜工業地帯として栄えた川崎に対しては、「工場が多い」、「治安が悪い」といったマイナスのイメージを持っている人もいるかもしれない。

しかし、現在の川崎は、これらのかつてのイメージとは大きく変わりつつある。市が主導となって「音楽のまち」、「映像のまち」といった新しい川崎を目指しているのだ。

そんな川崎の移り変わりを象徴するかのようなおしゃれなアーバンリゾートホテルが、今年6月に川崎の臨海部、羽田空港の対岸部に登場した。しかも使用済みプラスチック由来の水素エネルギーを利用した世界初の「水素ホテル」だ。

今回、ホテルに潜入し、川崎キングスカイフロント東急REIホテル総支配人の荒木氏と、水素を供給している昭和電工株式会社の高山氏にお話を聞いてきた。

まるで都心のリゾートホテル

このホテルは羽田空港の対岸、多摩川のすぐ横に立地した、工場跡地に建てられている。

ホテル外観

キングスカイフロント(King Sky front)と呼ばれるこのエリアには、医療や環境、ライフサイエンス、介護ロボット分野で日本の最先端技術を担う60社ほどが集まっている。国の国際戦略特区にも指定され、ビジネスをしやすくするため大胆な規制・制度の緩和や税制面での優遇という恩恵が受けられる。

「これだけ多くの優れた研究をしている会社が集まっている特徴を生かし、オープンイノベーションが起こる地にしたい」。「コミュニケーションの場を作りたい」という川崎市の思いから、川崎キングスカイフロント東急REIホテルが建設された。そのため、ホテルのフロントにはコワーキングスペースが設けられている。

エントランス

コワーキングスペース

訪れてみるとわかるが、内装はアメリカのブルックリンをイメージしてデザインされ、非常にスタイリッシュだ。ファッション誌やウェブCMの撮影、新車の試乗会、川崎市主催の音楽会など、イベントスペースとしても活用されている。

オープンスペース

エントランス

客室の窓にはカラフルなカーテンがつけられている。この目を引く外観は、先端技術、芸術・文化、自然など多くの魅力があり、国籍・年齢・性別などにかかわらずいろんな人が住んでいる「川崎の多様性」を表現している。

カラフルなカーテンは、「川崎の多様性」を表している

宿泊客の宿泊理由はさまざまだ。まず平日は近隣の会社の人が研修や出張で利用するケースが多い。週末には、関東周辺の50-60代のご夫婦や家族、カップルが泊まりに来る。仕事の接待で使い、休日に家族でまた来る、といったリピーターも多い。

オープンスペース

オープンスペース

目の前には多摩川が優雅に流れている。湿地もあり、ランニングやサイクリングを楽しんでいる人が多い。そして対岸には羽田空港があり、お酒を飲みながら夜景も楽しめる。

多摩川沿いをジョギングしている

羽田空港のイルミネーションを見ながらお酒を飲むことができる

世界初の「水素ホテル」とは?

水素は、発電時にCO2を排出しないクリーンなエネルギーだ。

もともと昭和電工は、使用済みプラスチックからアンモニアを製造するケミカルリサイクル(廃プラを化学的に分解して再利用する)を実施している。これまでアンモニア製造の原料として使ってきたプラスチック由来の水素を来るべき水素社会に向けてなにかに使えないか?という思いからこのプロジェクトははじまった。

日本政府も水素社会に向けさまざまな取り組みをしている。このプロジェクトも、「使用済プラスチック由来低炭素水素を活用した地域循環型水素地産地消モデル実証事業」という環境省の事業として採択されているのだ。

エントランス横にあるレストラン

実は水素エネルギーを利用したホテルはすでに日本にある。そんななか、川崎キングスカイフロント東急REIホテルが世界初の「水素ホテル」なのは、ふたつの理由からだ。

ひとつ目は、水素の原料に、家庭から集められた使用済みプラスチックが使われているという点だ。また、ホテルで使用されるアメニティの歯ブラシとヘアブラシもほかのゴミとは別に回収されて昭和電工の工場へと送られ、水素エネルギーとしてホテルに戻ってくる循環型の仕組みとなっている。宿泊者は環境のことを意識しなくても、自然と川崎の環境に貢献できるようにデザインされているのだ。

アメニティの歯ブラシとヘアブラシ

ふたつ目は、通常水素は圧縮されトラックで運ばれるところを、昭和電工から5キロメートルのパイプラインで直接ホテルの純水素型燃料電池まで送られる点だ。これによって、トラック輸送からCO2を排出しない、より低炭素な仕組みとなる。

純水素型燃料電池

ホテルの外に設置された水素燃料電池は、1時間に最大100キロワット発電できるので、1日24時間で2400キロワットを供給する能力がある。また、発電時の廃熱を利用して水をお湯にする利用も可能で、ユニットバス約200杯分のお湯が賄える計算だ。

現在、この水素燃料電池からホテル全体の電気代の10%ほどの電力が賄われており、数ヶ月以内に30%まで高まる予定とのことだ。

ホテルの外に設置してある水素燃料電池

低炭素社会を目指し、水素の地産地消を実現する新しいモデルである。現時点で国内および国外へのさらなる具体的な進出は決まっていないそうだ。しかし、低炭素化を進めていきたい企業・団体や自治体とコラボして、ホテルやほかの商業施設へと広まっていくといいなと思う。

編集後記

「世界初の使用済みプラスチック由来の水素エネルギー」×「コミュニティスペース」×「羽田空港の目の前のアーバンリゾートホテル」という、新しいものが多数かけ合わさった斬新なコンセプトがユニークな川崎キングスカイフロント東急REIホテル。新エネルギーに興味のある人から、羽田空港の夜景を楽しみたい人、川を目の前にゆっくりとした時間を過ごしたい人まで、どんな人でも楽しめるホテルとなっている。

対岸には羽田空港が見える

2020年の7月にはホテルのすぐそばに対岸へとつながる橋が架かり、羽田空港から車で5分、歩きでも行き来できる距離になるという。旅行者はもちろん、近場で非日常をゆっくりと味わいたい人にとくにおすすめしたい。

【参照サイト】川崎キングスカイフロント東急REIホテル
【参照サイト】川崎市地域循環型水素地産地消モデル
【参照サイト】昭和電工株式会社
【関連記事】東急ホテルズの新しい挑戦。川崎の工場跡地に誕生した世界初の「水素ホテル」とは?