ITインフラが普及したように見える現代でも、未だ世界の半数以上の人がインターネットにアクセスできていないという。
とくに、農村地域など人里離れた場所にはなかなか設備が行き渡らない。都会であれば、インターネットを使いたい人が多くいるため基地局を設置するのが経済的だが、人が少ない場所ではそうはいかないからだ。
グーグルの持株会社Alphabetの傘下企業であるLoonは、基地局の主要な装置を成層圏に届くほど空高く持っていけば、より広い土地をカバーでき、結果的に人口の少ない地域にもITインフラを提供できると考えた。そして装置を空高く持っていくために考案されたのが、気球で飛ばすという方法だ。
すでにペルーやプエルトリコで飛ばした実績があるこの気球。実際に気球が飛んでいる様子を動画で見ると、興奮してくる。遠くのきれいな山々と、柔らかく風に揺れる白い気球。現地で見ても楽しそうな光景だが、気球を基地局の代わりとして機能させるには裏で多くの労力がかかっている。
https://youtu.be/HOndhtfIXSY
まず課題となるのが、成層圏という環境の過酷さだ。地上から約20km上空、気象現象も起こらないこの場所は、時速100km以上の風が吹いたり-90℃という気温になったりする。この環境で100日以上耐えられるよう、気球は頑丈に作られている。
それと同時に全体をなるべく軽くするため、基地局の主要な装置を設計し直している。装置はすべてソーラーエネルギーで動くようになっており、エネルギー効率にも優れた設計だ。
そしてこの気球は、どこに流れてもいいわけではない。インターネットを必要とする、目的の地域に飛ばさないといけないのだ。成層圏では文字通り風が層を成しており、それぞれの層では風が異なる速度や方向で吹いている。そこでLoonは、風の予測モデルと意思決定のアルゴリズムを使い、気球が風の層の中を上下しながら目的の方向に飛ぶようナビゲーションしている。GPSで気球の場所を追跡し、地上に戻すときは制御しながら備え付けのパラシュートで安全に下ろす。
今月には通信事業者のTelkom Kenyaと手を組み、2019年からケニヤで気球を飛ばすことを発表したLoon。アフリカでは初の試みだ。こうして世界中でインターネットが繋がっていくのが待ち遠しい。この気球が飛ぶ地域では、たくさんの人がわくわくしながら空を見上げていそうだ。