運輸部門の「脱炭素化」が加速している。実は航空業界でも、100以上の電気飛行機事業が進行しているのだ。
2017年には仏エアバス、英ロールスロイス、独シーメンスの3社が、100人乗りのハイブリッド電気旅客機を共同開発し、2020年までの初飛行を目指している(※1)ほか、英国の格安航空会社イージージェットも、180人乗りの電気旅客機を、ロンドン・パリ間などの路線で10年以内に導入することを目指している(※2)。
この背景にあるのは、航空事業で排出されるCO2の増加問題だ。航空業界のCO2排出量は全世界の2~3%を占めている。1999年に発表された「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の特別報告書によると、今後さらに増加し、2050年には人為排出量の3%に達すると予測されている(※3)。
このような状況のなか、飛行機の電動化を加速しそうなニュースが飛び込んできた。イギリスのヒースロー空港が、イギリス初の商業電気飛行機に対し、1年間空港に無料で着陸できる権利を与えると発表したのだ。さらに、ヒースロー空港で営業するすべての航空会社の電気飛行機を対象にインセンティブを与える予定だという。
電気飛行機事業は活発化しているものの、事業者たちを悩ますのは、多額の開発費や、電気飛行機の需要は本当にあるのかということである。そこでヒースロー空港は、着陸の無料化によって、航空会社の電気飛行機事業投資へのインセンティブを生み出し、同空港でのゼロエミッションフライト需要を高めようとしている、というわけだ。
ここでひとつ注意しておきたいのは、電動化イコールCO2の削減ではないことだ。化石燃料を使った発電由来の電気ならばこれまで通りCO2を増加させる。再生可能エネルギーで発電された電気を使ってはじめて対策につながることを覚えておかなければならない。いずれにしても、航空業界のCO2削減は必須課題であることは間違いないだろう。
今回の取り組みは、ヒースロー空港の「脱炭素化計画」を実現する上でも重要な役割を果たす。ヒースロー空港のチーフ・エグゼクティブである、ジョン・ホーランド・ケイ氏は「ヒースロー空港は長年にわたり、航空産業の持続可能性をリードしてきた。次のフロンティアはゼロ・カーボンの飛行だ。今回の取り組みが、2030年までに、ヒースロー空港でのゼロ・カーボンな飛行実現につながることを願っている」と語った。
ヒースロー空港は毎年約7800万人の乗客が利用するヨーロッパ最大の空港だ。世界トップクラスの空港の取り組みが今後、航空業界の脱炭素化にどのような影響を与えるのか、目が離せない。
※1 Airbus, Rolls-Royce, and Siemens team up for electric future Partnership launches E-Fan X hybrid-electric flight demonstrator
※2 10年以内に「電気飛行機」に乗れる? 英LCCと米ベンチャー企業の挑戦
※3 国際航空からのCO2排出 抑制策に関する報告書(財団法人空港環境整備協会/財団法人運輸政策研究機構 国際問題研究所)
【参照サイト】Heathrow offers free landing charges for a year to UK’s first electric plane