ADHDを治療するビデオゲームが登場。自閉症、うつ病の治療にも有効か

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ADHD(注意欠陥/多動性障害)とは不注意、多動性、衝動性の3つを中心的な症状とする発達障害だ。本人はこのような特性があることで日常生活に困難をきたしており、周囲の理解や適切な治療が必要となる。大人の場合も子どもの場合も、ADHDの治療法は大きく分けて、心理社会的アプローチと薬物治療の2種類がある。

心理社会的アプローチとは、対人関係能力や社会性を身につけるトレーニングを行ったり、医師やカウンセラーの指導のもと生活環境を改善したりする治療法だ。薬物治療では主に神経伝達物質を増やす働きのある薬を服用し、症状をコントロールすることを目的としている。現状ではこれらがADHD治療の2本柱だが、今後新しい治療法が確立されるかもしれない。

アメリカの会社Akili Interactive Labsは、ビデオゲームを使った治療法の開発を進めている。これは子どもを対象にした治療法で、認知障害やそれに伴う症状を改善することを目的としている。前頭前皮質を活性化させるため、感覚刺激を与えたり運動反応を測定したりするのが特徴だ。すでに申請における主要な試験を終え、後はFDA(米食品医薬品局)に認可されれば、従来の薬と同じように患者に処方することが可能になる。

Image via Akili Interactive

同社のサイトにビデオゲームの具体的な内容は書かれていないが、ジャンルはアクションゲームで、患者がゲームに没頭することが治療になるそうだ。300人以上の子どもを対象に行った実験によると、このゲームで遊んだ子は他のゲームで遊んだ子と比べて、注意力を測るテストで断然良い結果を出したという。このゲームは患者のレベルに合わせた難易度になるよう自動的に調整され、いわば子ども達がパーソナライズされた治療を受けることができる。

同社はADHDだけでなく、他の障害や疾患を治療するゲームも開発している。これらはまだ申請における主要な試験の段階に至っていないが、ASD(自閉症スペクトラム障害)、MDD(大うつ病性障害)、そしてMS(多発性硬化症)の治療を目的とした臨床研究が進められている。同社はこういったゲームを用いる治療を「デジタル治療」と呼び、ヘルスケアのありように変化を起こすべく活動している。

ADHDと違い、ASDの治療薬は現時点では存在しない。ADHDかと思いきやASDの特性を持ち合わせていることにも気づき、しかも最近はうつ傾向まである、という事態はよくあることで、診断名にこだわらず個別の状況に合わせた治療を行うことが大切だ。そんな「私」という病の治療に、ゲームが一役買うことを期待したい。

【参照サイト】Akili Interactive
【参照サイト】大人のためのADHD NAVI
【参照サイト】親と子どものためのADHD NAVI
【参照サイト】Kaien

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