住所のイノベーション。たった3単語で全世界の居場所を示す「what3words」の挑戦

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「お花見会場で友人が見つからない」「お祭りの人混みの中で恋人とはぐれてしまった」「取引先のオフィスの住所へ到着したはいいが、入口はどこ?」今自分がいる住所がないその場所を、相手に正確に伝えることができたらどれだけラクだろうか。日常の中で、そう感じる場面は少なくない。

そんな世界中の住所がない場所を、3つの単語で表す仕組みを開発した会社、「what3words(ワット3ワーズ)」。同社は、今年11月の始めにソニーのコーポレートベンチャーキャピタルSony Innovation Fundから資金調達を行ったことを発表し、日本国内でも引き続き注目を集めている。そして11月21日、同社のCMOを務めるGiles Rhys Jones氏が来日し、日本初のプレスブリーフィングを実施した。

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what3words CMOのGiles Rhys Jones氏

はじまりは、創業者の実体験から

プレスブリーフィングは、Jones氏による20分ほどのプレゼンテーションから始まった。what3wordsは、世界全体を57兆個の3メートル四方の正方形に分割し、その正方形ひとつひとつの住所を3つの単語のみで言い表すという独自の位置情報システムである。現在、日本語を含む26言語で利用されている。

たとえば、「///いちがつ・わたくし・ねむい」という3つの単語が表す住所は、Sony Innovation Fund東京オフィスビルのエントランス前3メートル四方という、従来の住所では指定できなかった細かい位置をピンポイントで指し示すことができる。そんなサービスが始まったきっかけは、創業者兼CEOのChris Sheldrick氏の実体験にあるようだ。

「Chrisは、かつて音楽イベントを開催していました。そのとき、GPSを使った位置情報だけでは具体的な場所を特定するのが難しく、必要な機材が目的の場所に届かないことがあったり、出演者やゲストが会場にたどり着くのに時間がかかったりしたことがよくありました。そこで、住所がない場所を簡単に示すことができる方法を探したのです。」

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Image via what3words

What3wordsで既存の住所をさらに正確に

そんな画期的なwhat3wordsの仕組みには、疑問が絶えない。一体、どのようにして57兆個もの正方形に、1つも被ることなく単語を割り振っているというのか。

問いに対してJones氏は、「たとえば英語の場合、4万語の単語を使用しています。4万×4万×4万は64兆となるので、57兆個の正方形をカバーすることができます。日本の場合は30名の言語学者にひとつひとつの単語をチェックしてもらい、2万5000語を使っています。」と回答。アルゴリズムについてはとても難しいと語っていたが、理論的に可能であるようだ。

質疑応答で特に場が白熱したのは、「サービスの仕組みにも限界があるのではないか」という主旨の質問が挙がったときだ。what3wordsは世界中の地表を3メートル四方の正方形に分割しているため、ビルの高層階など3次元には対応していない。「首都高の下に一般道が走っている場合があるため、3次元の需要もあるのではないか」「3次元に対応する予定はあるのか」といった、what3wordsの新たな展開を期待する質問が挙がった。

Jones氏はこのような意見を受け、「本サービスは既存の住所に取って代わるのではなく、互いに補完し合うことを目指している」と強調した。そもそも通常の住所がない場所では、what3wordsの3単語が住所代わりになることがある。しかし既存の住所がきちんとある地域については、その3単語を追加で利用することで、より正確かつ詳細な位置情報が分かるというメリットがある。時代の流れで無くなっていくものもあれば、残るべきものが残ることもある。

what2words meeting

認知度・収益・善い行い。3つのバランスを取る

今年11月には、Airbnbとの提携を発表した。モンゴルの遊牧民などの公式の住所を持たない人々を対象に、オリジナル住所を提供するサービスを展開している。

そんな中、what3wordsとの提携により、移動生活を営む遊牧民でも、Airbnbのホストとしてゲストに宿泊先の位置情報を知らせることが可能となった。このパートナーシップは、遊牧民たちの伝統的な生活様式を支える新たな収入源を生み出すことにより、持続可能な観光を支援しているという。

arbnb

Image via what3words

現在世界175か国で1,000社あまりの顧客がいるが、その全ての顧客から対価を受け取っているわけではない。人道的な活動や緊急性を有する場合などは無償での提供となるという。また、旅行ガイドブックに乗ることで認知度を上げることができるため、観光地の位置情報としてwhat3wordsの3単語が掲載された場合も同様に、対価を受け取っているわけではないという。

「では、一体どこから収益を得るのか」という参加者からの疑問。Jones氏は「収益源となるのは、車関係の会社が多いです。このケースでは車1台ごとに収益を得ています。」と回答した。たとえばメルセデスベンツは今春から、世界初の「what3words」音声入力ナビが組み込まれている車種を発売した。これにより、長々とした住所を入力しなくても、3つの単語を音声で入力するだけで目的地を指定できるようになったという。

収益源についてJones氏は「認知度・収益・そして善い行いという3つのバランスを取る」という前提のうえで、顧客に応じたさまざまなケースがあると説明した。

世界で通用する共通の住所を

世界ではまだ、40億もの人々が自身の住所を持っていないという。これは、医療や法律上での基本的人権を否定することにつながったり、ビジネスを開始したり、物の提供を難しくさせる。

what3wordsは、そんな世界を変えようとしている。今回のブリーフィングでは、「より効率的で安全な未来を目指し、さらに社会に貢献したい」というJones氏たちのスピリットを強く感じた。

人々が国境を超え、世界をまたぐ今の時代だからこそ、世界で通用する共通の住所が必要なのではないだろうか。今後のwhat3wordsの広がりが楽しみだ。

【参照サイト】what3words
(※画像提供:what3words

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