プラスチックは、酸素や水分を通しにくい、食品衛生を保つのに適した素材だ。その上、加工しやすく大量生産が可能であるため、プラスチック汚染が問題となっている現在でも、飲食業界でプラスチック使用を完全にやめるのは難しいと考えられてきた。
そんな従来の常識をくつがえしたのが、アイルランドの大学キャンパス内にオープンした「Bio Green Café」だ。ユニバーシティ・カレッジ・コーク(UCC)とケータリング会社KSGが協同で運営を行うこの「完全プラスチックフリー」カフェでは、キッチンでも顧客に料理を提供する段階でも、一切使い捨てプラスチックを使用しないのだという。
Bio Green Caféの工夫は、仕入れの段階から始まっている。一部の野菜は大学内で栽培し、そのほかの必要な食材は、地元で調達。食材の輸送に使われる容器は使い捨てではなく、届いたらその都度、供給者に返却され再び使われるようだ。
店内の食事や飲み物は、ガラスか缶の容器で提供される。テイクアウトの場合は、顧客がマイボトルやランチボックスを持参しなければならない決まりだ。容器を忘れたときは、別途、堆肥化可能な素材でできた専用のテイクアウト容器を購入することになる。
これらの追加料金は、一回のみであれば小さな出費かもしれないが、カフェに頻繁に通う学生たちにとっては大きな痛手だ。
食事を提供した後にも施策が続いている。協同会社KSGは、再利用可能な食器類の管理を担うのに加え、ごみ箱の中身を量り、ゴミの量の推移を調査しているという。
これらの小さな施策の積み重ねにより、オープンから3ヶ月の間で、プラスチック製食器20,000点が廃棄されずにすんだ計算になるという。効果が出ているのは明白だ。
このプラスチックフリーカフェの運営は、学生が始めたGreen Campus Projectの一環である。プロジェクトではこれまでに、学内における使い捨てカップの提供廃止、学生へのマイボトル配布などの施策を実施。2018年夏には、国外の大学から生徒を招待し、UCC初の試みとなる「サステナブル・サマースクール」も開催した。
一連の活動が評価され、UCCは、2018年「最もサステナブルな大学ランキング」で81ヶ国700機関中、なんと9位にランクインした。
アメリカ版流行語大賞に「使い捨て」を意味する「Single Use」が選ばれたことからもわかるように、使い捨てプラスチックの問題に多くの注目が集まった2018年。数はまだ少ないが、日本のカフェやレストランでもプラスチック製のストローを廃止する動きが見られた。
しかし、これらの「ストロー廃止」ムーブメントが、多くの消費者の意識をかえる布石になったとしても、ほかのところで多くのプラスチックが使われ続けていることに変わりはない。実際、ストローを廃止するだけでは海洋汚染は解決しないとの議論も勃発している。
店舗経営者の立場からすればコストやステークホルダーの意見など考慮すべきことが多く、今すぐに、プラスチック製品を全面廃止するのは難しいだろう。だが、個人が意識して使用量を徐々に減らしていくことは可能だ。
一人ひとりの工夫は小さいもしれないが、私たちの取り組みが積み重なれば、環境にとっては大きな違いとなるだろう。
【参照サイト】UCC Launches Bio Green Cafe
【参照サイト】UCC named one of world’s ‘most sustainable’ universities
【参照サイト】UCC Green Campus Blog
【参照サイト】Word of the Year 2018