「事故の写真で『いいね』を稼ぐの?」モラルの見直しを訴える―野次馬にだけ見える看板とは

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事故の現場に遭遇したとき、あなたはどうするだろうか?

「いいね」をもらう良い機会だ、と写真や動画を撮影しSNSにアップする?あるいは、考えるよりも先に「反射的に」スマホのカメラを向けている人もいるのではないだろうか。

事故を撮影する野次馬

image via shutterstock

こうしたいわゆる見物人(野次馬)の存在や行動は、起きてしまった事故の被害をさらに拡大させてしまう。様子を見ようとした人が現場付近に車を停めたせいで渋滞が発生し、救護車両の到着が遅れるといった事例も多い。2016年ドイツで10歳の女の子が車にひかれた事故では、押し寄せた野次馬が救助隊や警察の活動を妨害し、なかには、「写真をとるのに邪魔だ」と警官にどくように求める人もいたという。

撮影に夢中で周りが見えなくなっている“スマホ・カメラマン”や“自己満足ジャーナリスト”たちには、現場の救助隊の警告も届かない。「彼らの注意を惹くには、スマートフォンの画面上で直接メッセージを訴えるしかない」と打ち出されたのが「トロイの看板」キャンペーンだ。

この動画は、ドイツ連邦内務省(Federal Ministry of the Interior)がドイツのPR会社fischerAppeltと共同で製作したものである。

事故現場の奥にある大きな看板は、ただ真っ白なだけで、何も書いているようには見えない。しかし、スマホカメラをかざすと、真っ白だったはずの看板に、画面上でだけ読めるメッセージが浮かび上がるのだ。

“Take care, not pics.”
―写真じゃなくて、気遣いを。

“If you want to share something, donate your blood.”
―何かをシェアしたいなら、写真じゃなくて献血を。

“Show emotions, not emojies.”
―絵文字じゃなくて、寄り添う気もちを。

ハッシュタグ「#SHARINGISNTCARING(シェアすることは、いたわりじゃない)」とともに、こうしたメッセージが看板に映し出される。

trojan billboard動画のキャプチャー

image via “Trojan Billboard”

キャンペーン動画の撮影時にたまたま居合わせた一般市民たちは、現場を写真に収めようとこぞってスマホを取り出していたが、実際に彼らがシェアしたのは「トロイの看板」のメッセージのほうだったという。こうしてキャンペーンは瞬く間にソーシャルメディアで拡散され、ドイツの有名タブロイド紙ビルトでも取り上げられた。

「トロイの木馬」という言葉は、トロイア戦争での故事から「正体を偽って潜入し、内側から破壊行動を起こすこと」を指すようになった。これにちなんで名づけられた「トロイの看板」キャンペーンは、スマホ画面や「いいね」マークしか見ていない人たちの価値観を、本人の中からガラリと変えてくれることだろう。

【参照サイト】The Trojan Billboard
【参照サイト】PR STUNT “THE TROJAN BILLBOARD.”
【参照サイト】German police shame ‘gawpers’ who filmed injured child on their phones

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