子どもの顔をSNSに載せる親に「ディープフェイク」で警告する、ドイツの痛烈広告

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インターネットやテレビで、小さい子どものおもしろ動画やハプニング動画が共有されている。一見微笑ましい光景だが、子どものプライバシーが晒されることが、何を意味するのか。まだ幼い子どもは、自分の姿が人々の好奇の目にさらされているとは思っていないだろう。

通信事業者のドイツテレコムは、2023年7月、親が子どもの写真や情報をインターネット上で公開すると、子どもの将来に悪影響を及ぼす可能性があると警告する動画「Nachricht von Ella | Without Consent(エラからのメッセージ | 同意なし)」を公開した。

エラは、自身の親によって、たくさんの写真や個人情報をインターネット上で公開されているという設定の9歳の女の子だ。動画の中では、こうして公開されたエラの1枚の顔写真と、AI(人工知能)を使い、成長したエラのディープフェイクが作られる。

エラのディープフェイクは動き、自分の親に警告する。「あなたたちがシェアしてる写真は、ただの思い出だと思ってるかもしれないけど、データなの。誰にでも保存されるし、(悪質に)使われる可能性があるよ。私はネットミームにもなりたくない」

インターネット上で写真や動画を共有すると、子どもが声や顔を加工されてなりすましの被害に遭ったり、いつまでも他人の笑いものになったりする恐れがあるというのだ。技術を悪用する者によって、児童ポルノに使われる可能性もあることも示唆されている。


親としては悪気なく公開した情報でも、世界中の誰がそれを見ているか分からないのがインターネットだ。広告動画では、ショックを受ける大人たちの顔が映されていた。「子どもの同意も得ず、軽率なことをしたかもしれない」と、反省する人も中にはいるのかもしれない。

近年、親が子どもの情報をインターネット上で公開することを指す、「シェアレンティング」という言葉も誕生している。シェアレンティングは、プライバシー保護の観点から問題視されることが多い。

ドイツテレコムによると、子どもは5歳までに、親によって平均で1,500枚もの写真をインターネット上に公開されているという。それらが悪質に使われない証拠は、どこにもない。

AIが発展する昨今。親子の思い出は、子どもを大切にしてくれる、信頼できる人とだけ共有するといった、慎重さが求められるのではないだろうか。

【参照サイト】“ShareWithCare”: Telekom raises awareness for responsible use of children’s photos on the Internet | Deutsche Telekom
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