スイスのスタートアップEnergy Vault社が、再生可能エネルギーを貯めて有効利用できるコンクリートタワーを開発した。
このタワーはエネルギー容量35 Mwh、ピーク電力は4 MWという実用規模のエネルギー貯蔵技術をもち、商業利用ができる。インド最大の総合電力会社Tata Power社にもこれから導入予定のシステムだ。また、スイスのCEMEX Research Group AG社もEnergy Vault社のシステム展開を世界規模でサポートしていく。
現在、世界では再生可能エネルギーの開発が急ピッチで進められている。しかし、その多くは風や日光などに依存するため、エネルギーの生産予測が難しく、化石燃料のような継続的なエネルギー供給が難しい。また、効率とコスト効果に優れたエネルギー貯蔵ができない場合、再生可能なエネルギー源から電力網に供給できる電力量は制限される。
この問題を解決すべく、Energy Vault社が生み出したのがコンクリートタワーだった。これは揚水式水力発電からヒントを得ているが、揚水システムよりも低価格で効率がよく、地形や環境、そして生態系に悪影響を及ぼさずに、エネルギーを貯蔵できるのが特徴だ。
コンクリートタワーは、以下のように機能する。
太陽が出ている日中や風の強い時間に、余ったエネルギーで6つのアームクレーンを使ってコンクリートブロックを高く持ち上げる。そして、夜間や風の少ない時間にコンクリートブロックを下ろし、発生する重力エネルギーを電力に変えるのだ。
クレーンの動きはエネルギー貯蔵や放電、そして天候などを考慮して、Energy Vault社が独自開発したソフトウェアが完全自動調整する。これらの機能が、キロワット時あたりのコストを大幅に削減し、高い往復効率を可能にした。
コンクリートブロック自体も、廃棄されたコンクリート材料を使用しており、低コストで環境にやさしい。耐久年数は30〜40年で、その間エネルギー貯蔵容量は維持される。
Energy Vault社の共同創設者であるビル・グロス氏は、この技術について「エネルギー貯蔵の革新は、再生可能エネルギーの導入を加速させ、エネルギー需要拡大に対応していく大きなカギになる。」と述べる。
再生可能エネルギーを効率的に貯められる、変わった形のコンクリートタワー。新しいエネルギー源確保と同時進行で、さらなる開発普及が行われていくことだろう。今後が期待される。
【参照サイト】Energy Vault
【参照サイト】Energy Vault Announces Commercial Availability of Transformative Utility-Scale Energy Storage Technology Yielding Unprecedented Economic Benefits to Global Energy Providers
(※画像:Business Wireより引用)