VRで子どもの視点を経験できる?子どもの危機管理に大きな一歩

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2016年がVR元年と言われてから3年が経ち、日本人のVR体験率も20%に上るなど、私たちがVRに触れる機会は少しずつ増えてきた。ゲームやエンタメ施設だけでなく、医療や小売りなどの産業でも活用が進む一方、学術分野の研究も日々進んでいる。

現在の技術では、VR対応のゴーグルと全身スーツを装着することで、自分の体の動きとVR空間のアバターの動きをシンクロさせることが可能だ。アバターと現実の体の感覚がシンクロすることが多くの研究で明らかになっており、VR空間で障害物にぶつかったときの痛みすら錯覚するという。

このようなVR空間を活用し、バルセロナ大学の研究チームは「子どもは周りのモノの大きさを正確に把握できない」ことをVRで実証する研究結果を発表した。

研究では、30人の被験者にゴーグルを使ってVR空間を経験してもらった。被験者は大きさが異なる6つの立方体を見て、目視でその大きさを答えるテストを受けてその正答率を記録した。その後、被験者を「4歳児の見た目のアバター」と「背の低い大人のアバター」の2グループに分け、アバターが現実の自分の動きとシンクロすることをVR空間内で確認してから、立方体の大きさを当てるテストを再度行った。

A,子どもの視点 B,背の低い大人の視点 C,取りつけられた34のセンサー(PNAS資料より)

2回目のテストの結果、両方のグループとも正答率は低下したが、「4歳児のアバター」グループの方が「背の低い大人アバター」グループよりも正答率が大幅に低下したのだ。その後、アバターが現実の自分の動きとシンクロしない状態で3回目のテストを行ったところ、立方体の大きさの正答率の変化は両グループで同じ低下率を記録した。

この研究の重要な示唆は2つある。一つは、子どもの身長だと自分の周りの空間を正確に認識することが難しいこと。この示唆は今後、子どもの危機管理につながるだろう。

そしてもう一つは、VRを用いて他人の視点を経験することが、その人の認知に大きな影響を与える可能性があることだ。過去の実験では、「VR空間内でアインシュタインのアバターでIQテストに答えると普通のアバターよりも高得点を記録した」という研究結果も存在し、自分自身に対するイメージが自分の行動や態度に影響することを示している。

この研究が示唆することは、VRを使って異なる視点や考え方を経験することで、自らの行動や態度を変容させられる可能性だ。実際に研究メンバーの一人は、「犯罪加害者が被害者の視点で事件現場を見ることで事件を客観視する機会を提供できる」と考えているようだ。

VRの社会的な活用として、防災訓練システムや、シリア難民の視点を経験できるコンテンツなどがすでに存在する。IDEAS FOR GOODでも、妊娠中絶を望む女性の視点を体験できるVR動画を取り上げた。今回の研究のように、VR経験が人の認知と行動に影響する仕組みやエビデンスが蓄積されることで社会的な取り組みでの活用が進むことが期待できるだろう。

【参照サイト】Virtual Reality Allows Adults See World Through Child Eyes
【参照サイト】Illusory ownership of a virtual child body causes overestimation of object sizes and implicit attitude changes