世界初、政府機関公認のドローンビジネス。ついに宅配サービスがオーストラリアで開始

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私たちの身の回りに飛行するドローンは年々増えている。2017年のドローンの全世界出荷台数は前年比39%増の約300万台と推定され、市場は大きな勢いで成長している。一産業に特化したドローンの開発と普及も進んでおり、2020年の全世界出荷台数は680万台に達すると予測されている。ビジネスでの活用の広がりは当分続きそうだ。

そのようなトレンドの中、オーストラリアの首都キャンベラ地域で、世界初となる政府公認のドローンによる宅配サービスの開始が許可された。同サービスはGoogleの親会社であるAlphabet社を中心に、1年半以上にわたって試験運用を続けてきたプロジェクト「Wing」だ。

オーストラリアの航空局によってドローン飛行の安全性、交通整理、メンテナンス体制、パイロットのトレーニング、業務実施計画などに問題がないことが確認され、サービスの開始が認められたのだ。サービス開始の初期では、キャンベラ近郊の約100世帯に食料、医薬品、地元産のコーヒーやチョコレートなどの雑貨を宅配するという。

ユーザーは、スマホ上から宅配サービスを利用できる。専用のアプリから宅配希望の商品と宅配先を選択すると、ドローンの飛行経路が自動で決定される。飛行中のドローンの位置や到着予定時間はアプリ上からリアルタイムで確認可能だ。荷物の受け渡しの際には、上空のドローンからアーム付きのロープが下ろされるので、プロペラが回っているドローンに近づかずに受け渡しができる。

2012年のプロジェクト構想当初は、心臓発作を起こした患者にAEDを届ける事業を検証することが目的だった。しかし、その前提となるドローンの有効性や信頼を証明するために、より身近な生活の中で価値提供できる事業に切り替えたという。そして2017年より、キャンベラ地域のレストランと薬局の2社と提携してテストトライアルを実施し、効果的な運搬方法や安全な荷物の受け渡しなどの検証を進めてきた。

Alphabet社によれば、ドローンによる宅配は今後大幅な普及と地域へのインパクトが見込まれるという。同サービスはキャンベラ地域の宅配費用を年間13億円削減できるため、輸送コストの影響が大きい中小規模事業者に特に大きいメリットがもたらされる。

プロジェクトの実現にあたって特に重視されたのが安全性の確保だ。同サービスでは、「日中のみの飛行許可」「大きな道路を横切ることの禁止」「最低飛行高度の設定」などの条件が設けられている。また自動で安全な飛行ができるように、「無人飛行管理システム」の開発も進められている。米国連邦航空局とオーストラリア民間航空安全局と協働して、安全な低空飛行を可能にするシステムを開発し、ドローンが地上の人間や航空機へ危険及ぼすことを防ぐ狙いだ。

2030年には、同地域内の物流の4~6%をドローンが担い、デリバリー食品に関しては25%を占めると予測されている。これによって、3,500万キロ分の車両走行が削減され、70件の交通事故減少が推計されるなど、経済面以外で地域へのメリットも大きい。

さらに、移動手段に困難を抱えやすい13,000人の障がい者と6,700人の高齢者にもサービスを提供できるので、生活用品へのアクセスを向上する効果もあると見込まれている。

当面、ドローンの活用は幅広い産業分野で広がっていくことが想定される。すでに安全性を確保するルール作りも進んでおり、事業者も増えているなどビジネス環境が整ってきているのが現状だ。このような低コストで先進的なテクノロジーが普及することで、様々な社会課題解決にも活用されることが今後期待される。

【参照サイト】Googles World First Drone Delivery Business Wins Approval In Canberra
【参照サイト】Canberra

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