「女性の美しさ」に革命を起こす。ダヴの#ShowUsプロジェクトに参加したフォトジャーナリストが考える本当の美しさとは?

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ふと、電車の中で周りを見渡す。目に映るのは、脱毛エステの中吊り広告の中で完璧なポージングをする、スリムで肌が綺麗な女性。美容整形の広告の中には、くっきり二重でサラサラの髪の毛をなびかせる女性がこちらを見て微笑んでいる。

私たちの日常の中には気付けばそんな、誰かが作り上げた「女性の美」の広告であふれている。小さい頃からそうした広告に囲まれて育った私たちがいつしか大人になったとき、広告の中にいる自分の身体とかけ離れたモデルたちを見て「自分もああならなければならない」と、プレッシャーを感じてしまうのも無理はない。

ユニリーバの美容ブランド、ダヴが行った調査によると、世界の女性の70%が広告などで日々目にする女性の画像に不満を感じているという。少しずつ多様性が広がってきてはいるものの、いまだにメディアで使われる多くの画像は、女性とその外見や能力に対して狭い視野に基づいた非現実的な美の基準を押し付けるものになっている。私たちの生活は日々、このような制約や排他性、固定観念の影響を受けており、これらは女性の健康や人間関係にも悪影響を及ぼす。

そんな社会問題を背景にダヴが立ち上げたのが、世界最大規模のストックフォトライブラリを構築する#ShowUsプロジェクトである。今回のプロジェクトの写真では、「こうあるべき」と押し付けられた女性像ではなく、ありのままの女性を表現することで美しさの固定観念を打ち破ること目指している。さらに、メディアや広告を通して、より多様で包括的なビジュアルランドスケープを築くことを推進している。

ダヴは以前にもストックフォトサイトshutterstockを合法的にハッキングし、”Beautiful Woman”の定義を変えるというユニークなキャンペーンも行っており、女性の美の多様性を問い直す機会を積極的に創出している。(参考:「美しい女性とは?画像の検索結果をハックして女性美を問い直すDoveのキャンペーン」)

「日本は世界第3位の経済大国であるにもかかわらず、女性はいまだに『第二級の市民』として扱われています。女性が服従的で、乳児的で、もろく、薄く、若いと描写されることに私は衝撃を受けました。メディアと広告主は美の多様性を十分に表現していません。」

そう考え、今回の#ShowUsプロジェクトに参加した映画作家兼フォトジャーナリストの深田志穂さん。彼女に、プロジェクトに参加したきっかけや美しさの概念について伺った。

話者プロフィール:深田志穂

東京を拠点とする、エミー賞にノミネートされた映画作家兼フォトジャーナリスト。世界報道写真大賞マルチメディア賞受賞。彼女の作品は、The New York TimesやThe Washington Postなどをはじめ多くの海外メディアで作品を発表。ファッションや広告業界で働いた後、ストーリーテリングに関心を持ち、フォトジャーナリストとしてのキャリアを開始。 2017年に日本に帰国後、社会の中で疎外されている人々(つまり女性)を記録する活動を開始。

1年かけて構築されたフォトライブラリの画像数は5,000枚

#ShowUsプロジェクトは、ダヴが画像制作・配信の世界最大手であるgettyimages(ゲッティイメージズ)、そして世界20万人の女性とノンバイナリージェンダーからなるクリエイターのネットワークであるGirlgaze(ガールゲイズ)と協力して創出されたものだ。

Girlgazeに所属する写真家116人が1年をかけて構築されたこのフォトライブラリの所蔵画像数は、なんと5,000枚を超える。そして今回、gettyimagesでは初めて、179人のモデルたち自身が、それぞれ自分に合う画像の検索キーワードとタグを設定した。

それらはすべて、モデルたち自らの言語と言葉を使って自分自身の美しさを定義したもの。画像加工は一切なしの、ありのままの美しさを多様に表現したことで、モデルたちは本当の自分が表現されたと実感しているという。

#ShowUsプロジェクト

#ShowUsプロジェクト

日本では人と違うことがコンプレックスになりやすい

Q: 今回、深田さんが#ShowUs プロジェクトに参加したきっかけを教えてください

フォトジャーナリストとして日々、ドキュメンタリー作成や写真活動、映像活動などをしている際に、取材対象である「理想とされる女性」と「現実を生きる女性たち」とのギャップに違和感を覚えていました。本プロジェクトの「今までメディアに露出していた、美の理想のカタチを打ち破っていこう」という趣旨をGirlgazeから聞いたときに心から共感し、すぐに参加を決めました。

よく広告で見るようなパーフェクトな女性は、現実にはなかなかいません。そこに近づこうとすることで、女性は無意識にプレッシャーを感じてしまいます。女性だけではなく男性にももちろん、こういったプレッシャーはつきまとうと思いますが、女性の場合は特に影響を受けやすく、本来であればすべての女性が持っているはずの「美しさ」に気づけずに型にはまってしまうのは残念なことです。

特に日本のような単一国家の中では、海外と違っていろんな宗教や考えなどに触れる機会が少ないですよね。そのため人との違いに敏感で、自分が人と違うことがコンプレックスになりやすいんです。

「可愛い」だけじゃない。女性を表す形容詞はもっとあっていい

Q: 深田さんが感じている広告の問題点について詳しく教えてください

現代に浸透しているスリムな体型や大きな目、サラサラの髪の「良しとされる女性像」は男性によって変えられてきたものだと思うんです。その中には、リアルな女性の声が入っていません。

私は海外に住んでいる期間が長いのですが、外から日本を見たときに一番違和感を覚えるのが「可愛い」という言葉です。本来であれば「可愛い」は子供に使うものなのに、日本では20代以降の女性や40代に向けても「可愛い」という価値観が重視されています。それに対して、なんだか私は「女性は可愛くなければならない」と、押し付けられているようにも感じます。

女性を表す形容詞は「可愛い」だけでなくてもいいと思うんです。「元気」とか「自信に溢れている」とか、もっともっと多様性があっていいはずなんです。

Q: 海外でも活躍されている深田さん。海外と比べた日本の女性の美の多様性について

最近は少しずつですが、日本も変わってきていると思います。渡辺直美さんが若者の間で人気であったり、4年前にはなりますがミス・ユニバース日本代表がアフリカ系アメリカ人であったりとか。一方で、そうしたメディアの露出の変化は感じますが、実際にそれが受け入れられているかはわかりません。

やはりまだまだ、ステレオタイプの理想の美はあると思います。しかしこういった問題は、アメリカでもよく聞くことです。なので決して日本が劣っているわけではないのですが、各国の差があったとしても、世界の目標は一緒です。今回のプロジェクトのように、世界のみんなで同じ方向に向かっていくことに意味があると思います。

#ShowUsプロジェクト

#ShowUsプロジェクトのタグには「笑顔」「楽しさ」「自信」などの表現が使われている

自分に自信を持つ女性が増えることで多様性は広がる

Q: 今回の#ShowUsプロジェクトのモデルさんはどんな方たちでしたか

今回のプロジェクトで私が撮影したモデルは、ToriとJudyの2人です。女性は穏やかで静かであるべきだという社会の期待がありますが、Toriは60代の情熱的なポップダンサーで、Judyは力強いゴスペルシンガーです。私は、ToriとJudyが美しい女性の良い例であると思っています。2人とも飾らずありのままで、社会からどんなことを言われても気にしていません。

カメラがいてもいなくても動じない力強いパワーと彼女たちらしい表情に、撮影中なんども「美しい」と感じました。どんな個性も大切にして、自分に自信を持って強くいることで、そこから多様性や自分らしさは広がっていくと思うんです。

Q: プロジェクトの中で特に印象に残った撮影はどんな場面でしたか

2人が外でダンスしている姿を撮影したときです。音楽が流れた瞬間、2人とも本当に生き生きとしていたんです。私は何ひとつ言葉の指示をしておらず、自然に2人から溢れ出たものを撮影しました。歌声がすごくパワフルで素敵だったのが印象的です。やはり、その人が自分の好きなことをして夢中になっている瞬間って美しいですよね。

Q: 深田さんが考える「本当の美しさ」とはなんですか

年齢的にも体系的にも、今回撮影した2人は、いま世に出回るステレオタイプの美しさではないかもしれない。けれど、自分の良いところも悪いところも含めて理解していて、それでいて自分自身のことを愛し、抱きしめてあげている彼女たちは本当の美しさを持っていると思います。

本当の美しさとは、実は美しさにこだわらないことだと思うんです。美しいという基準で自分をはからないことが何よりも大切です。

#ShowUs

自信に満ちた力強い眼差しが印象的なJudy。Image by #ShowUs

#ShowUs

生き生きとした笑顔のTori。Image by #ShowUs

自分は自分。あなたらしい姿こそが一番美しい

Q: 美の多様性を浸透させるために大事だと思うものはなんですか

日々、他人と比べないことです。自分に自信がないと、どうしても自分と他人を比べてしまいます。女性の場合は、どうしても外見に自信を委ねてしまいがちです。外見の美しさではなく、あなたは何を大事にしたいのかを考えてみてください。

女性としての個の部分を見つけるための具体的にできるアクションとしては、旅行もいいかもしれませんね。いろんな人と出会い、話をすることで新たな自分を発見する。外見ではなく、自分の心と向き合って、本当の自分磨きをする。「自分は自分」と、マイペースでやっていくこと。その姿こそが、一番美しいのです。

Q: #ShowUsプロジェクトを見た人にどんなことを感じて欲しいか

このプロジェクトを見て、世界各国のいろんな女性の姿に触れて欲しい。いろんな美の姿があるべきで、1つの尺で自分をはからないことを、この#ShowUsプロジェクトを通して感じて欲しいです。普段、テレビや雑誌を見てステレオタイプの美しいとされる人はたくさんいると思いますが、一番大切なのは、あなた自身の個性を大切にすることです。あなたにしかできないこと、あなたにしかできない考え、あなたにしかできない人との接し方。そのすべてを、大切にしてください。

そして、あくまでもステレオタイプの美しさではない#ShowUsプロジェクトのモデルの子たちを見たときに何を想うか。「美しい」とか「輝いている」。そう感じた気持ちを、どうか忘れないでください。

#ShowUs

Image by #ShowUs

編集後記

「一番大切なのは、あなたの個性を大切にすることです。」インタビューの中で、深田さんは何度もこの言葉を強調していた。そんな優しくあたたかいこの言葉は、女性や男性関係なく、誰しもにあてはまることだ。

「外見が美しくない自分なんて」「自分には何もいいところがない」と引け目を感じてしまう経験は、誰しもにあるだろう。そんなときに自分自身を救ってくれるのはきっと、外見の美しさではなく、これまで自分自身が経験してきたことの中で、自分だけにしかない感性で感じたこと、考えたことで生まれた表情や自信なのではないだろうか。そうして生まれたものが美しくないわけがない。人それぞれ異なる感性を持つのだから、誰しもにその人らしい個性が必ずある。

そんな「自分にしかない個性」を、一人一人が大切にすることが美しさの多様性を広げていく。ぜひ、このプロジェクトに共感した方は、実際に写真提供をしたりフォトライブラリの写真を利用したりすることで、#ShowUsプロジェクトへ参加してみてはいかがだろうか。

【参照サイト】#ShowUsプロジェクト
【参照サイト】gettyimages公式サイト
【参照サイト】Girlgaze公式サイト
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