「中絶は人間の権利」7人のCEOが合同で一面広告を紙面に掲載

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アメリカ・アラバマ州で人工妊娠中絶を禁止する法律が制定されたのを受けて、女性のヘルスケアに関わる企業7社のCEOが、合同でニューヨークタイムズに一面広告を掲載した。

国内の企業が性の健康に関する議論をしてこなかったことを問題視し、ビジネスセクターの姿勢を変えさせることが狙いだ。広告では7社のCEOの署名と共に、「中絶の選択肢があることは女性の命や健康、人権やジェンダーの平等に不可欠」であるとし、企業は自社のスタンスを表明するよう呼び掛けている。

今回の広告の発端となったのは、アメリカ南部に位置し、保守州として知られるアラバマ州で2019年5月に制定された法律だ。

この法律では「母体に重大な健康被害がある」場合を除き人工妊娠中絶手術は重罪とされ、執刀した医師は最大99年の禁固に処される。性的虐待や性的暴行による妊娠への中絶手術は処罰の対象外とする修正案も提出されたが、議会で否決された。国内で、「最も厳格な中絶禁止法」として評価される法律となったのだ。

アメリカでは1973年に連邦最高裁判所が「妊娠の継続の決定は女性の権利」とした判例があり、それを機に妊娠中絶は権利として保証されてきたが、今年に入って中絶を処罰する州法が国内4州で可決されている。妊娠中絶を禁止する州法を制定し、その実績をもとに1973年の判例を覆したいという中絶反対派の狙いがあるようだ。

広告を掲載した7社が扱う商材は、スキンケア商品、生理用品、女性向けセックストイ、性的健康に関する研修、生理用下着などが中心となっている。各社に共通する問題意識として、女性が本来必要なヘルスケアや健康情報にアクセスする機会が限られていることや、それによって女性の健康や自由が脅かされていることを挙げている。今回の法律によって、低所得者層やアフリカ系アメリカ人など、社会的に不利な地位にいる女性に特に大きな被害が生じると考えられている。

広告を掲載したCEOの一人は、妊娠中絶が企業にとって「複雑な問題であり、炎上が不安」であることに理解を示しつつも、「情報を発信する力を持つ企業が、人命に関するテーマに対して共同で声を上げることが必要」だと主張する。

ジェンダーの平等や環境保護、最近では「この髪どうしてだめですか」で知られる学校の校則など、企業が特定の社会課題や社会的議論に対して自社のスタンスを明確にすることが近年増えている。これによりブランディングとして企業イメージを発信したいという狙いだ。

今回の中絶禁止法に関しても、米国内でデモが起きたり、セレブリティが反対意見を表明するなど社会的関心が高まっている。企業が自分たちのスタンスを表明する社会的な土壌はすでに整っており、消費者が企業を評価する軸も変わりつつある。

企業が製品を提供するだけでなく、消費者の価値観やライフスタイルを応援し、未来を描くようなメッセージの発信が求められるだろう。

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