学校卒業の条件は「木を植える」こと。フィリピンで提出された、森林保護のための新法案

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アジアの島国で多くの人口を抱え、日本との共通点も多いフィリピン。高温多湿な気候で、豊かな自然が育まれた大地に、1億人以上が暮らしている。

そんなフィリピンでは、森林破壊の問題が深刻だ。1990年から2005年の間に、違法伐採などによって国内の森林面積の32.3%が失われたと言われており、現在もすさまじいスピードで減少している。

この問題を解決するため、フィリピン下院では新たな法案が出されている。学生に対し、卒業する前に少なくとも1人10本の木を植えることを義務付ける「環境のための卒業遺産法案(Graduation Legacy for the Environment Act)」だ。小学校・中学校・高校・大学のすべての学校で適応されるという。

提案者の一人であるアレハノ議員は「毎年1200万人以上の生徒が小学校を卒業し、約500万人が高校を卒業し、約50万人が大学を卒業しているので、このイニシアチブが適切に実行されれば、毎年少なくとも1億7500万本の新しい木が植えられることになります。一世代で、5250億本にものぼるでしょう。」と述べる。

フィリピンで植林義務付け

新しい木を植えることは、やりがいのある行動だ。しかし英科学誌ネイチャーによると、新しい木よりも前から植えられていた古い木のほうが多くのCO2を吸収する力があり、生物多様性と生態学的機能の面でもより価値があるという。つまり、植えた分だけ破壊をしてよいという意味ではない。この法案の目的の一つとして、若い学生たちが、体験を通じて環境保全に貢献することで、単に森が増えるだけではなく、「破壊をしない」という環境意識もより高めることが期待されている。

森林破壊はフィリピンに限ったことではなく、世界的な問題だ。日本の国土は、68.5%が森林で、フィンランド、スウェーデンに次ぎ、世界で第3位である。これは、先進国では非常に高い数字だ。日本の人口は都市部に集中しているため、自覚のある人は少ないかもしれないが、日本も世界トップレベルの森林大国なのだ。高度経済成長期には、フィリピンと同様の問題が日本でも発生した。

若い学生に植林を義務づけることで、環境保全と同時に教育を行うこのフィリピンの法案。日本も含め、他の国々も学ぶところがあるだろう。今後の展開に期待したい。

【参照サイト】Philippines Passes Bill Requiring Students to Plant 10 Trees Before Graduating

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