日本初のダイバーシティをテーマとしたミュージアム「対話の森」が、2020年東京でのオープンを目指しクラウドファンディングに挑戦している。このミュージアムは、視覚や聴覚に障がいがある人や、70歳以上の高齢者がプログラム案内人のアテンドとして働き、あらゆる違いを超えた “対等な対話”を楽しめる場だ。
具体的には、日本を含む世界各地で開催されているソーシャルエンターテイメント「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」「ダイアログ・イン・サイレンス」「ダイアログ・ウィズ・タイム」の3つのソーシャルエンターテイメントが体験できるという。
- 照度ゼロの暗闇の中、暗闇のプロフェッショナルである視覚障がい者に導かれ、視ること以外の感覚を使って日常のさまざまなシーンを体験する「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」
- 音を遮断するヘッドセットを装着し、音声に頼らず生活する達人の聴覚障がい者に導かれ、言葉の壁を超えた対話を楽しむ「ダイアログ・イン・サイレンス」
- 70才以上のアテンドと共に、歳をとることについて考え、世代を超えて生き方について対話する「ダイアログ・ウィズ・タイム」
3つの取り組みの発端となったダイアログ・イン・ザ・ダークは1988年、ドイツの哲学者アンドレアス・ハイネッケによって発案された。彼は差別が起きる理由と解決法を探求する中で、異文化が融合するには対等な立場での対話が必要だと確信。見た目で物事を判断しない対話を実現するために、視覚を遮断することを思いついたそう。
対話の森では、障がい者や高齢者“でも”できる仕事ではなく、困難を乗り越えてきた経験と知恵を持ったひとりの人間“だからこそ”継続してできる仕事、という新たな働き方の可能性を提示する。
ミュージアムを管理・運営する一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサイエティは、誰もがかけがえのない存在であることを自ら感じ、信じあい、助け合える社会を目指している。対話を重ねることで、ハンディキャップのあるなしは互いが持っている「強み」が違うことだと気づくきっかけになるそう。ダイアログ・イン・サイレンスのとあるアテンドは「聴こえなくなったことが、言葉だけに頼らない多様なコミュニケーションの力と幅を得たことなのだと気づき、嬉しくなった」と話している。
対話の森では同時に2つのプログラムを開催予定で、2020年はダークとサイレンス、2021年はダークとウィズ・タイムを併設する。体験型ミュージアムのほか、アテンドを目指す人、学生、コミュニケーションスキルを磨きたい人方向けに、ダイアログイベント開催チームが20年に渡り培ってきた対話のノウハウを学ぶ「ダイアログ・アテンドスクール」も同時に開講するという。
対話の森は、マジョリティとマイノリティはその場の状況や環境で変化しうることや、健常者、障がい者、高齢者などを区別するのではなく、誰もが唯一無二であり、魅力を持っていることを教えてくれるだろう。ミュージアムは東京の浜松町に新たに誕生する複合施設「ウォーターズ竹芝」にオープン予定で、ホテルや商業施設、劇場も併設され、観光がてらの気軽な体験も期待されている。多様性のあり方を発信し、多くの人を巻き込む良い取り組みになることを願う。
【参照サイト】一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ
【参照サイト】対話の森