宮崎県宮崎市には、日本でも珍しいショートパンツに特化したブランドがある。“Short pants every day” と名付けられたこのメンズブランドは、九州南部の暖かな気候を持つ宮崎県を、ショートパンツ販売を通してさらに元気にするために作られた地元発のブランドだ。
製品のプロデューサーは現役サーファー。サーフィンが盛んな南国宮崎で生まれたブランドなだけあって、製品は通気性と速乾性に優れているが、海ばきに限らず街ばきでも快適に使えるものばかりだ。ブランドのコンセプトは、自由で解放された精神を持ち、自身のルーツを大切にする「FREEDOM & NATIVE」。
筆者はこのコンセプトがとてもユニークだと思ったと同時に、なぜショートパンツブランドを?そしてこのブランドでどうやって地元に貢献するの?ということが気になった。Short pants every dayを運営する宮崎のセレクトショップ「wagon」の創業者、錦田雅哉さんに、ブランド立ち上げの背景にある想いを聞いてみた。
話者プロフィール:錦田雅哉(にしきだ まさや)
(株)ワゴン 代表取締役 1968年 宮崎県高岡町生まれ、宮崎西高、北海道教育大学函館分校卒業、函館市(有)トマホークスにて販売職を経験し、地元宮崎に帰省。1993年、24歳でwagon創業。2014年 ライフスタイルブランド「Short pans every day」スタート。趣味、サーフィン、フリークライミング。週一回の素人料理が息抜き。
なぜ「ショートパンツ」にこだわったのか
2014年初夏、錦田さんは、ブランド創立のためにまずクラウドファンディングプラットフォームFAAVOで「宮崎発!日本では珍しいショートパンツ専門ブランドを立ち上げよう!!」なるプロジェクトを立ち上げた。地域を盛り上げるプロジェクトに特化したFAAVOで資金の調達に取り組んだ理由は、なにより地元民に「宮崎発のユニークなメンズブランド」を周知したかったから。これが、Short pants every dayの始まりである。
もともと、1993年からアメカジや東京のブランドを紹介するセレクトショップwagonを運営していた錦田さん。しかし郊外への大型ショッピングモールの開店や、Eコマースの台頭、若者人口の減少により、次第に店舗の売り上げが減少していった。もともと5店舗あったセレクトショップを宮崎市内中心部の1つにまとめたが、ブランドの流行り廃りに影響を受けやすいこともあり、このままの商売の方法では持続しないと考えたという。
買い物文化が変わるなかで良い商売を続けていくためには、自分たちでブランドを創らなくては?と思うようになり、さまざまなアイテムを検討していく中で、自分が大好きなアイテム「ショートパンツ」に着目しました。
繊維産業のない宮崎ですが、「温暖な気候」や「自然」「海」「サーフィン」などの宮崎らしいキーワードがショートパンツのイメージと重なり、2014年にショートパンツブランドwagonをスタートしたんです。当初は「ショートパンツだけなの!?」と絞り込んだアイテム展開にびっくりされる方が多かったですが、いまでは県外のお客様にも宮崎にはショートパンツに特化したブランドがあるぞ、と少しずつ浸透してきているかなと思います。
現在、ブランド名をwagonから元々のコンセプトでもあったShort pants every dayに変更して、ライフスタイルブランドを目指しています。wagonはその本店としての位置付けで宮崎市内中心部にメンズに絞ったセレクトショップとして営業しています。今年で27年目を迎えました。
Short pants every dayは、製品を通して 曇りなく堂々と “Shortpants change your lifestyle. (ショートパンツにはライフスタイルを変える力がある)”と伝えている。本ブランドのショートパンツを履くことでどんな気分になってほしいのか、と聞くと、錦田さんからはこんな答えが返ってきた。
「膝を出すことで感じる自由」や「何者にも縛られない開放感」を感じて欲しいと思っています。ショートパンツを履いていないときでも、履いているときの感じを思い出すことで精神的に自由であって欲しい、と常に思っています。リラックスしたり、お仕事やクリエイティブな活動に良い影響があったりすれば嬉しいですね。
地域活性化をもっとおもしろく
ブランドを立ち上げたときの問題意識として、錦田さんには「長期休暇にはたくさんの人がサーフィンをしに訪れ、サーフィンのために移住する人がいるほどサーフィン文化が根付いた宮崎でも、サーフィンを楽しむ人々が身につけているブランドに地元のものはほとんどない」という想いがあった。同時に、自分が学生時代によく服を買いに通っていた若草通商店街からも段々と人が減り、全体的にローカルな場所の活気が薄れていることも気になっていたという。
商店街に普通のお店を開いても、人に知られることなく廃れていくだけ。ならば、宮崎が持つ「観光」と「マリンスポーツ」という切り口から新しいファッションスタイルを日本全国に発信して、地元にポジティブな風を吹かせようと考えたのだ。
実際、2014年のShort pants every day創業から現在までで、サーフィンのために宮崎発のものを買う人は少しずつ増えてきたという。サーフィンの大会にイベント出店してPRをすると、地元で作られたショートパンツブランドということに注目して興味を持つ人がいるそうだ。
僕がブランドを通して最終的に実現したいのは、やはり地元宮崎に貢献することです。「〇〇の本店」を訪れてみたいように、Short pants every dayの本店がある宮崎を訪問してくれる人が増えてほしい。そのために、宮崎の自然や事柄を通して宮崎の魅力、ブランドの世界観を伝えていきたいと考えています。次の目標は衣食住を通して宮崎や九州の良さを伝えていくことです。
ブランド設立から6年目を迎え少しずつですが進化しています。僕らが販売するショートパンツは、コンセプトである「FREEDOM&NATIVE」を実現する為のツールであり、「ショートパンツブランド」だけが地元の魅力を伝える正解ではないと思っています。
自由で解放された精神を持ち、自分の地元やルーツを大切にしたい。そのためのアイテム作り、カルチャー作りに励んでいきます。2020年は200年の伝統を持つ九州の生地、久留米絣を使用したショートパンツを製作し、さらに九州・宮崎の素晴らしさを伝えていきたいです!
商品販売を通した地域活性化やサステナビリティへの取り組みにおいて大切なのは、商品そのもののデザインが良く、質が高いことだ。ソーシャルグッドな面を知らなかったとしても、「好き」だと思えるような良いものなら、自然と手に取りたくなる。Short pants every dayは、デザイン性と機能性を兼ね備えたショートパンツで地域ならではの魅力を発信し、そのルーツに誇りを持てるようなブランドだ。
▶ Short pants every day オンラインショップ
【参照サイト】Short pants every day
【参照サイト】宮崎発!日本では珍しいショートパンツ専門ブランドを立ち上げよう!!