人と人のコミュニケーションを豊かにするためにスマホが生まれた。しかし今、そのスマホが逆に進化しすぎてしまったが故に、人と人のつながりを貧しくしてしまっていないだろうか。
私たちは1日に、平均3時間近くスマートフォンを使っている。このデータを見てドキッとする人も多いだろう。電車に乗っているあいだは常にスマホを開く。そして誰かから連絡が来ていないかと度々LINEをチェックし、そこまで興味のないニュースに惰性で目を通す。
スマホを見たいという馴染みの感情を抑えながら人の話をきいているとき、もしくはスマホを操りながら人と会話しているとき、自分の良心を裏切っているように感じる。私たちは目の前の友人や家族、恋人のことをどれだけ知っているだろうか。
ニュージーランドのBoringPhoneというスタートアップは、私たちがスマホに使う時間を減らし、他のことに時間をかけられるよう、便利な機能は残しつつ私たちの気を散らす余計な機能を取り除いたスマホことBoringPhone(退屈な電話)を開発した。同社は現在クラウドファンディングサイトのKickstarterで資金調達を行っており、2019年12月頃からBoringPhoneの提供を開始する予定だという。
BoringPhoneに搭載されている機能は通話、ショートメッセージ、カメラ、GPS、ポッドキャスト、ミュージックプレイヤー、テザリング、計算機、カレンダー、時計、FMラジオ、ボイスレコーダーなどのシンプルな機能のみだ。一方、搭載されていない機能はEメール、ブラウザ、ソーシャルメディア、アプリストアだ。ガラケーよりは機能が多いが、一般的なスマホほど多くない絶妙なラインナップである。
使い方は人それぞれだろう。家ではiPhoneを使い、外ではBoringPhoneを持ち運ぶ人、子どもに持たせる人、週末のみBoringPhoneに切り替えて仕事の連絡を遠ざける人、スマホを使いすぎたときにデジタルデトックスのような位置づけで使う人。もちろんBoringPhoneのみを所有するという選択肢もある。気になる価格は、499NZD~(約36,000円)だ。
BoringPhoneでは、Androidに独自のオペレーティングシステムであるBoringPhoneOSをインストールしている。これはオープンソースなオペレーティングシステムであるLineageOSを一部変更したバージョンだ。100を超える言語をサポートしており、現状日本では使えないものの、ヨーロッパ、アメリカ、インド、ロシアなど世界の様々な国で利用できる。
昔スマホが普及していなかった頃、私たちはまず電話で連絡が取れて、いざという時に安否が確認できることを重視していた。技術が発展したおかげで自撮りを盛ったり、Twitterに独り言を書いたり、音声検索をしたりするようになった。それは面白いことなのかもしれないが、時にはBoringPhoneを使うことでうんと素朴に、目の前の相手と静かに心を通わせ、生きていくには何が必要か考えてみるのも悪くないだろう。
【参照サイト】 BoringPhone