オーストラリアが異常な火災に見舞われており、海外メディアやSNS上で情報発信が続けられている。オーストラリアの乾季(夏)にあたる2019年8月頃から始まった今回の火災は、2020年1月11日の時点で10万平方キロメートル以上が焼失したと報道されており、これは北海道全土よりも大きい。昨年起こったアマゾン森林火災で焼失した面積が約9000平方キロメートルだったことと比べると、その規模がいかに大きいかが分かるだろう。
火災の直接的な被害を受けた死者は27名にのぼり、1300の家屋を含む2500以上の建物が焼失している。居住区にも火の手が回ったことから街全体で避難を強いられた地域もあり、ビクトリア州の港町マラクータでは、水へ逃げ込めるよう1000人以上がビーチに避難するという緊迫した出来事も起こっている。また、野生動物も甚大な被害を受けており、カンガルーなど約10億匹の野生動物が犠牲になったとされている。特にコアラは動きが遅く特定のユーカリの葉しか食べることができないため、種の存続が危惧されるほど深刻な危機に直面している。
今回焼失したエリアには、世界的にも貴重な生態系を有するブルーマウンテン国立公園やゴンドワナ国立公園が含まれており、そこに生息する希少な動植物の損失が心配されている。火災の間接的な被害として煙の影響も懸念されており、シドニーやキャンベラなどの主要都市では、人体に有害なレベルの11倍もの大気汚染が確認されている。また、煙の影響で主要都市をつなぐ高速道路が封鎖されており、オーストラリア経済への打撃も大きい。
オーストラリア国内の消防員のみならず、ニュージーランドなど国外から消防隊が応援に駆けつけたり、有志のボランティア消防団が集ったりするなど、猛暑の中で懸命な消火・救助活動が行なわれているが、鎮火の見込みは立っていない。
実はオーストラリアでは自然現象として毎年数多くの森林火災が起こっているのだが、今回の火災で“異常”とされているのは、いつもは火災の少ない東部が燃えていることだ。オーストラリア東部にはシドニーやメルボルン、ブリスベンといった主要都市が位置しており、例年火災の多い西部よりも人口が集中していることから被災した人数も多い。緑の豊かな東部は野生動物の個体数も多く、メディアで取り上げられるきっかけにもなっている。
東部が燃えている直接的な原因はまだ明らかにされていないが、一因として気温上昇が挙げられている。気温が上がることで空気が熱され草木が乾燥し、摩擦などの小さな要因により発火したのではないかと見込まれている。オーストラリアで広く分布しているユーカリの木の葉は非常に燃えやすく、着火すると森全体へと簡単に広がってしまう。またブッシュと呼ばれる背の低い気が生い茂るエリアでは時速10キロメートルほどの速さで燃え広がることもあり、これほどの速さでは消火活動が追いつかず火災エリアをコントロールすることは難しい。
今季、オーストラリアはここ数十年間でも稀に見る干ばつを経験しており、2019年12月にはヒートウェーブ(広範囲を襲う熱風)が全土で猛威をふるい国全体の最高気温平均を更新した。南半球に位置するオーストラリアは1月〜3月が夏本番で、火災はこれからも拡大し続ける見通しだ。
私たちができる3つのこと
オーストラリアのために、私たちは今何ができるだろう?ここでは日本から今すぐにできる3つのことをご紹介する。
1. 何が起こっているのか知り、より多くの人に伝える
まずは、何が起こっているのか知ることからはじめよう。火災の現状について前述したが、今回オーストラリアで起こっている火災は、大陸規模で燃えるという世界的に見ても前代未聞な大きさのもので、日本人にとってその様子を想像するのは容易ではない。「オーストラリア_火災」で調べれば、より詳細な記事や動画が出てくるだろう。
また、情報をより多くの人に伝えることも大切だ。現在インスタグラムやツイッターなどのSNS上で「#PrayForAustralia」や「#PrayForAustraliaFromJapan」というハッシュタグで情報が共有されている。ぜひ自分が知った情報にハッシュタグを添えて拡散して見てほしい。
今回、日本メディアでの報道が遅れたこともあり、オーストラリア火災が起こっていることやその深刻さを認識していない人も多い。日常の会話の中でも火災の話題をだしてみれば、SNSに繋がっていない人にもより広く認知されるはずだ。
2. 寄付して被災地を応援する
現地に赴くことは叶わなくとも、寄付を介して被災地を支援することは可能だ。様々な機関で寄付が募集されているので、内容とともに紹介していく。
消防隊員を支援する
NSW RURAL FIRE SERVICE(ニューサウスウェールズ州地方消防局)
国内でも甚大な被害を受けているニューサウスウェールズ州。火災は治まるどころか熱風の影響で拡大を続け、隣のビクトリア州にまたがって6万平方キロメートルの森林が燃えている。地元の消防隊員では手が足りず、7万人以上のボランティアが消火活動に当たっており、この機関への寄付金は、そうしたボランティア消防隊員の活動費として使用される。
火災で亡くなった内の3名はボランティアとして参加していた消防隊員であり、現在も多くの人が過酷な状況下で消防活動を行っている。参加者の中には、自分が被災している人や仕事を休んでボランティアに参加している人も多い。
被災者を援助する団体を支援する
▶ Australian Red Cross(オーストラリア赤十字社)
オーストラリア赤十字社は、火事で被災した人のための基金を設立している。今回の火災に対して既に1285人のボランティアがオーストラリア赤十字社を介して参加しており、69以上の避難所を設立し被災者の受け入れを行なっている。寄付金はこうした被災者のサポートに使用されるほか、火災で家を無くしてしまった人への交付金として使用される。
▶ Victorian Bushfire Appeal(ビクトリア州火災対策機関)
ニューサウスウェールズ州と同様に被害が今も広がっているビクトリア州では、復興への寄付金を募っている。真っ赤な大気の中マスクをつけて住民が避難した様子がニュースで報じられた街・マラクータはこの州に位置している。ここで集められた寄付は、地元の大手銀行であるベンディゴ銀行との協力のもと、今回被災した人々の生活復興に当てられる。
▶ GIVIT(ギヴィット)
GIVITはオーストラリアの非営利機関で、この機関を介せば寄付金を送れるだけでなく、自分が寄付できる物資とその物資が必要な人とのマッチングが行える。「Lサイズの服1箱」などアイテムの内容を掲示板に貼れば、それが欲しい人が返答し物資が届けられるという仕組みだ。
現在、オーストラリア国内の被災地では、物資があふれて困っている自治体も多い。この方法を使えば被災地に必要なものが届き、また自分の支援がどのように役立つのか明確にもなる。日本から物資を送る場合は少し届くまでに時間がかかるが、もし自治体などで集めたものがあれば、利用してみてはいかがだろうか。
野生動物の保護を行っている団体を支援する
▶ WIRES(ワイヤース)
WIRESは、約30年以上にもわたり野生動物の保護と治療を行っている、オーストラリア最大の動物保護団体だ。資金は寄付に頼っており、動物の専門家とボランティアによって保護活動が進められている。連絡があれば24時間・365日救助に出向いており、2019年12月の1か月だけでも3000匹以上の野生動物を保護している。
今回の火災では、森が大きく焼け、多くの動物が帰る家を失ってしまった。WIRESは、怪我をした動物の保護だけでなく、住処を失ってしまった動物たちのアフターケアまでを行う予定だ。WIRESのフェイスブックページからも簡単に募金が可能となっている。
▶ RSPCA (王立動物虐待防止協会)
RSPCAは、ニューサウスウェールズ州にて動物の保護活動を行なっている非営利機関だ。この機関では、野生動物だけでなく火災で取り残されてしまったウマや羊などの家畜動物の保護も積極的に行われている。
▶ Port Macquarie Koala Hospital(ポート・マッコリーコアラ病院)
今回の災害で甚大な被害を受けているコアラへの支援を行える機関もある。コアラは特定のユーカリ種しか食べないなどケアが難しい中、この病院ではすでに31匹の保護・治療に成功している。回復の様子も随時アップデートされているので、寄付後もどのような活動が行われているのか情報の追跡がしやすいのも嬉しいポイントだ。
3. 鎮火後にオーストラリアを訪れる
今すぐには支援できなくとも火災が治まった後、復興を始めたオーストラリアを訪れることも大きな助けになる。旅行がてら被災地を訪れ、そこでお金を落とせばそれは直接的な支援になるだろう。
オーストラリアの火災シーズンはずっと続くわけではなく、例年通りに行けば5月頃には落ち着く見込みだ。日本の夏に当たるオーストラリアの冬は、寒すぎず過ごしやすい。来年の夏の休暇の行き先はオーストラリアにしてみてはいかがだろうか。
被災した町を訪れることはもちろん、野生動物を保護しているサンクチュアリーなどを訪れることもオススメしたい。
まとめ
今も拡大を続ける、オーストラリア火災。現在筆者はオーストラリアに滞在中なのだが、ニュースを見ればひっきりなしに新しい情報がアップデートされ、街の人との会話でも挨拶のように火災の話題が上がる。
相手は大いなる自然であり、人間の力で鎮火することは難しいが、どんなに小さなことでも行動を起こせばオーストラリアの助けになるはずだ。情報の拡散でも寄付でも、自分のできる範囲のことから支援を始めてみよう。
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