『Vogue』イタリア版、写真なしの1月号でファッション誌のサステナブルなあり方問う

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本屋やコンビニエンスストアで所狭しと並び、そのお洒落できらびやかな写真でいつも我々の目を楽しませてくれるファッション誌。幅広い情報を集め、誌面を充実させるには、写真家やスタッフが足で稼いだ写真や情報が不可欠であり、国内外の移動が欠かせない。だが、スウェーデンで生まれた言葉“Flygskam”(フリュグスカム、飛ぶのは恥)が示すように、欧米では飛行機移動をやめ、二酸化炭素排出量を抑えようという動きも活発だ。

こうした欧州内の動きを背景に、ファッション誌『Vogue』イタリア版では、“without traveling, shipping clothes or polluting in any way.”(旅も、服の輸送も汚染もこれ以上いらない。)をテーマに、写真の代わりにイラストを掲載した『Vogue』1月号を発刊した。これは創刊56年目となる『Vogue』誌史上初の試みだ。この試みを通じて、これまでのファッション誌出版が与えてきた環境負荷を明らかにし、ファッション誌のサステナブルなあり方の議論を呼び起こす契機にするねらいだ。1月号の売り上げは、11月に起きた大洪水により被害を受けたヴェニスのクェリーニ・スタンパーリア財団に寄付される。

記事の内容は、ファッション産業におけるサステナビリティと、服の製造プロセスのリサイクル及びゴミの削減の実態の特集となっている。また、これに関連して『Vogue』イタリア版編集長ファルネティ氏の同誌公式HPに公開された社説において、『Vogue』9月号の出版に150人のスタッフが関わり、取材のために20回以上のフライトと12回以上の電車での移動を行っていたこと、写真を使用した記事を制作する上で消費された電力やプラスチックゴミ、食品ロスの量の見積もりも発表されている。

表紙や記事のイラストには有名なイラストレーターやアーティストを起用しており、ファイナルファンタジーのキャラクターデザインで有名な天野喜孝や、モザンピーク出身のペインター、カシノ・ノマダ、イタリアの漫画家ミロ・マナラなど多種多様な人気作家が、様々な人種の現代の女性像を生き生きとした筆致で書き下ろしている。その魅力的な画像たちは同誌の公式インスタグラムアカウントで見ることが可能だ。

ファルネティ氏はさらに、今後、雑誌を包装するビニールを分解可能なプラスチックに置き換えていきたいと述べている。

『Vogue』のように、ファッション業界で大きな影響力を放つ雑誌がこのように実験的な取り組みを起こすことからは、気候変動がいかに身に迫った重大な問題であるかが読み取れる。また、特筆すべきは、1月号の中で1枚だけ写真が載っていることだ。写真は2人の17歳の写真家が撮影したもので、「未来を見据える目」として、気候変動デモが若い世代を中心に起こっていることを意識したものだ。今回の活動を受けて、イタリア国内にとどまらず、世界中のファッション業界がどういった変化をしていくのか、注視していきたい。

【参照サイト】Italian Vogue launches ‘photo-free’ sustainability issue
【参照サイト】Vogue Italia di gennaio: l’editoriale del direttore
【参照サイト】欧州で伸びる鉄道利用、理由は「飛ぶのは恥」

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