徳島市から車で1時間の山あいにある、四国一小さな町、上勝町。人口1,600人に満たない過疎地域だが、日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」を行ったことで知られ、エコツーリズムも盛んなこの町を、以前IDEAS FOR GOODでは“なぜ上勝町はゼロウェイストの町になれたのか?”という視点でレポートした。
そしてゼロ・ウェイスト宣言の達成目標となる2020年。上勝町は安住するのではなく、さらなる高みを目指して、ゼロウェイストを体験できるホテル「HOTEL WHY」を4月25日、オープンさせる。
上勝町では、人々の交流の場となる複合施設ゼロ・ウェイストセンター(WHY・ワイ)が今春完成予定で、併せてオープンするのがこのホテルだ。全4室、1部屋あたり2人から4人まで宿泊が可能で、料金は1泊朝食付で12,000円~(税抜)となる予定だという。
複合施設全体の名前となった「WHY(ワイ)」の由来は、「なぜ、今? なぜ、ここに? なぜ、我々が? なぜ、ごみを?」という問いへの答えが見つかる場所になるようにとの想いが込められている。施設の建造物を上空から見ると「?」の形なっていることにも因んでいるという。大建築・設計は、中村拓志&NAP建築設計事務所が行った。
建物には地元で伐採された杉材や、リサイクル建具、家具などを最大限に活用しており、非常にユニークな造りになっている。昔懐かしの木造校舎のような温もりや自然さ、ノスタルジーがあると同時に、どこか先進性も感じさせる、なんとも不思議な空間だ。
ホテルにはアドベンチャー&環境ツーリズムのインフォメーションデスクが設置されているほか、豊かな自然に囲まれたこの場所から、湖でのカヤックや、河原のピクニック、フライフィッシング、サバイバルゲーム、循環型社会における生活体験といったアクティビティに繰り出すことができる。また、施設には企業や大学関係者向けの研究ラボ、年数回のサステナブルビジスネスクールの教室にもなる上勝町民の多目的ルーム、リメイク&リユーズを推奨するパーツセンターなどが併設される予定である。
いくつもの集落があり、高齢化率約50%を超える地域が、町ぐるみで日本に先駆けてゼロウェイストの取り組みを行っていることから、私たちは多くの学びを得るだろう。資源の乏しかったフィンランドや、エストニア等の小さな国家とも共通するが、人は危機意識を持つことで生存本能や創造力が湧き出るものなのかもしれない。
ホテルの予約は、HOTEL WHYの公式サイトからすでに受け付けている。私たちが日々当たり前にしている「ごみを出すこと」を捉えなおし、さまざまな体験を通してゼロウェイスト実現のためのエッセンスを与えてくれるゼロウェイストホテルの完成が楽しみだ。
【参照サイト】WHY