これまで約60年間、日本や米国をはじめとする多くの国が、火星に向けて30以上の無人探査機を打ち上げてきた。将来実現されるであろう有人火星探査の際には、火星への往復も含めて1年以上の時間がかかり、当然その分の燃料や食料も必要になってくる。しかし、火星探査中に必要なすべての物資を輸送するには、莫大な資金とスペースが必要である。
そこで米カリフォルニア大学バークレー校の研究チームが開発したのが、太陽光・水・CO2の三つをつかって燃料をつくるシステムだ。火星の大気の約96%がCO2であることや、凍結した水が多く存在することから、効果的に使えると見込んでいる。また、地球から物資を大量に運ぶ必要がなくなるため、火星探査ミッションに必要な「積載物を軽くする」という条件も満たせる。
今回開発されたプロトタイプでは、外部ソーラーパネルがエネルギーを供給。しかし将来使用されるシステムでは、ナノワイヤー(人の髪の毛の100分の1ほどの細いシリコンワイヤー)がソーラーパネルとして機能するだろうと研究者らはみている。ナノワイヤーが光を吸収して電子を生成し、バクテリアと組み合わせる。そしてバクテリアが電子を取り込んで、水とCO2を燃料の原料に変えるのだ。プラスチックや薬品をつくるなど、他にもさまざまな使い方が想定されている。
このプロジェクトを率いたヤン教授は、太陽光とCO2から砂糖と炭水化物を効率的に生産するシステムの開発も進めており、火星探索の際に必要な食料の提供も考えている。
また、このシステムは酸素も生み出すことから、大気が薄く酸素がほぼゼロに近い火星を探索をする人に酸素を供給できるようになる。CO2を使って酸素を生み出す技術は、地球上でももちろん効果が期待されるだろう。
なんとも夢が広がる、カリフォルニア大学バークレー校の太陽光・水・CO2から燃料をつくるシステム。今後の展開がとても楽しみだ。
【参照サイト】On Mars or Earth, biohybrid can turn CO2 into new products
(※画像:カリフォルニア大学バークレー校より引用)