スペインの特別養護老人ホームがパッシブハウスに変身

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近年、建築物はただ見た目がよく快適なだけでなく、環境へ配慮しているかどうかも重要視されるようになってきた。たとえばドイツパッシブハウス研究所の認定基準を満たす省エネルギー住宅「パッシブハウス」。建物の機能や熱交換器による空調のみで、欧州で一般的なセントラルヒーティングの冷暖房を使わないことから、「パッシブ(受け身)な家」と呼ばれ、親しまれている。

そんなパッシブハウスの設計が、スペインでは初めて特別養護老人ホームに使われた。スペイン北東部ガリシアのカマルサーナデテラにある老人ホームが、パッシブハウスに生まれ変わったのだ。設計を行ったのは、マドリードのデザインスタジオCSO Arquitecturaである。

パッシブハウスの老人ホーム

Photo by David Frutos

もともとあった施設と比べて寝室が増え、屋外とのつながりがより一層強調される建築物となっている。また、気密性に優れた木製のフレームワークも特徴的だ。コンポーネントはバルセロナで作られ、現地まで運ばれてから実際の組み立てに要した期間は、わずか1週間。建設にかかるコストと時間を削減し、廃棄物を最小限に抑えている。

パッシブハウスの老人ホーム

Photo by David Frutos

この施設は、長い廊下でつながれた3つの南向きのバンドで構成されている。1つ目のバンドには、日中用のサービスと北向きの温室。残りの2つは寝室で、テラスと中庭につながっている。木材のぬくもりをそのまま活かした空間だ。

パッシブハウスの老人ホーム

Photo by David Frutos

屋根には、20枚の太陽熱パネルや18kWの太陽光発電アレイを設置。ここで作られた電力は、新設部分以外の施設全体に供給するのに十分だという。また、ガラスは3重で断熱効果を持ち、雨水も収集。熱回収機能を備えた機械換気システムも備え、最小限のエネルギーでの運営を徹底している。

筆者の住むスペインでは、新型コロナウイルス感染症が猛威をふるったことで多くの高齢者が犠牲になっており、人々は今も不安を抱えながら暮らしている。人にも環境にもやさしい特別養護老人ホームの存在は、人々を元気づけるものになると同時に、これからの建築のあり方を表している。

【参照サイト】CSO Arquitectura