世界最大のパッシブハウス。ドイツ・ハイデルベルクのエコ再開発地区「Bahnstadt」

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パッシブハウスをご存じだろうか。パッシブハウスとは、ドイツパッシブハウス研究所の性能認定基準を満たす省エネルギー住宅のこと。断熱材や高性能な窓、熱を逃さない換気システムをもつため、エネルギー効率がよく、夏は涼しく、冬はあたたかいことが特徴だ。

いま、ドイツ南西部に位置するハイデルベルク市で、このパッシブハウスによる大規模な街づくりが進んでいる。

再開発地区の名前は「バーンシュタット」。ハイデルベルク中央駅に隣接し、歴史のある美しい建物が並ぶ旧市街にも近い好立地で、昔、貨物列車駅だった土地と旧米軍跡地を利用したドイツ国内でも最大級の都市開発プロジェクトだ。2008年から2022年までハイデルベルク市が当プロジェクトを行い、投資額は約20億ユーロ(約2,330億円)にのぼると推定されている。

Bahnstadt

Image via Buck

面積は116ヘクタールと広大で、完成すれば、住居3,700戸に6,500人~6,800人が住み、5,000人~6,000人が働ける土地となる。バーンシュタットの目標は、最高品質の都市生活と研究地区の創造だ。この再開発地区に建てられる幼稚園と小学校、研究所や公園、市民会館や複合映画館はすべてパッシブハウスでつくられる。電気と熱は、すべて再生可能エネルギー(バイオマス)で供給され、100%持続可能だ。

ハイデルベルク市は、CO2排出量削減のための世界大都市気候先導グループC40に参加しており、生態学的に持続可能なアプローチをバーンシュタット開発に反映させた。これらの環境への取組みが評価され、2015年ハイデルベルク市はニューヨークの国連本部で「Global Green City Award」を受賞している。

2010年から始まった分譲も順調で、2018年末の時点で2,450戸が完成し、人口は4,000人にもなる。そして、若い世代に人気があることも特徴だ。ハイデルベルク市の平均年齢は40歳だが、バーンシュタット住民の平均年齢は29歳。ドイツ最古の大学であるハイデルベルク大学の学生も多く住んでおり、さらにバーンシュタットでは4日に1人赤ちゃんが誕生しているおかげで、市で最高の出生率を誇る。これを受けて、現在7つの保育施設がすでに稼働しており、2つの幼稚園が建設中だ。

敷地内の幼稚園

敷地内の幼稚園 Image via Buck

実際にバーンシュタットを歩いてみると、中央に広い緑地帯や公園やビ―チバレーコートがあり、それを囲むように保育所やコーワーキングスペースや住宅などが並んでいることから、生活施設が充実していることが伺える。建物の間を流れる小川には魚が泳ぎ、遠方には美しい山の緑が見える。ここに住めば、自然を間近に感じながら、気持ちよく毎日を過ごせそうだ。

中央の緑地帯

中央の緑地帯 Image via Diemer

建物の間の川

建物の間の川 Image via Diemer

バーンシュタット以外にも、ハイデルベルク市は環境に力を入れており、これまでにドイツの環境・持続可能都市として、たびたび表彰を受けている。市の中央部を流れるネッカー川には250人収容できるソーラー船が運航する。化石燃料を使用しないため、静かで臭いもなく、快適そのもの。ソーラー船に揺られながら見るハイデルベルクの景色は格別だ。また、ネッカー川にかかる水門の水の下には2つのタービンがあり、5,000世帯の電力量を賄う水力発電所になっている。

ソーラー船と後方に見える水門

ソーラー船と後方に見える水門 Image via Ryoko Krueger

ソーラー船内

ソーラー船内 Image via Ryoko Krueger

今回ご紹介した、ハイデルベルクで現在進行中の世界最大のパッシブハウスの都市開発地区「バーンシュタット」。若い世代が多く住むエコで活気ある街づくりがとても魅力的だ。みなさんも今度ドイツに行かれる際は、ハイデルベルクのエコを見て、体験して、感じてみてはいかがだろうか。

【参照サイト】Wissenswertes zur Bahnstadt Daten und Fakten
【参照サイト】Faktenblatt zur Heidelberger Bahnstadt – der weltweit größten Passivhaus-Siedlung
【関連ページ】パッシブデザインとは・意味
(※画像提供:ハイデルベルク市およびクリューガー量子)

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