【8/7(は・なの日)開催】 フラワーサイクリストと考えよう!ロス花を減らす、豊かなライフスタイル

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8月7日は「は・なの日(花の日)」。IDEAS FOR GOODは、花の廃棄問題に立ち向かう「フラワーサイクリスト」として活動するメンバーと共にイベントを開催しました。テーマは、花を日常の中でより身近にすることで、ロスフラワー(廃棄花)を減らすこと。

「もっと多くの人に花を身近に感じて欲しい!」という想いから企画された本イベント。花が大好きなゲストによるトークセッションと、参加者の皆さんで「若い人にもっと花を買ってもらうためのキャンペーン」を考えるワークセッションの二部構成で行われました。

【登壇者】
株式会社RIN代表 フラワーサイクリスト
河島春佳(かわしま はるか)さん

フラワーサイクル*アンバサダー
冨塚由希乃(とみつか ゆきの)さん

株式会社greenpiece
金森弘至(かなもり こうじ)さん・金森鮎美(かなもり あゆみ)さん

日本フローラルマーケティング協会会長(創設者)
法政大学経営大学院イノベーションマネジメント研究科教授
小川孔輔(おがわ こうすけ)さん

【MC】
イベントMC 奥井淳志(おくい あつし)さん
ミュージカル俳優兼フラワーサイクル*アンバサダー 春日希(かすが まれ)さん

花に関するサステナブルな情報発信や作品の販売を主に行うフラワーサイクルアンバサダーが主体となり、秋田の花屋さんや、日本フローラルマーケティング協会会長であり、法政大学教授の小川先生にもお話いただきました。それぞれが違う分野で花に関わる多岐にわたるメンバーより、花の魅力はもちろん、日本のロスフラワーの現状やコロナ禍における活動、一人ひとりが明日できることなどを語っていただきました。今回は、ワークショップで出た画期的で素敵なアイデアも含め、イベントの様子を読者の皆さまに伝えるべく、レポートをお届けします。

ロスフラワーの現状と取り組み

──トークは、新型コロナ前後におけるゲストの皆さんのロスフラワーを減らすための活動から始まりました。

希さん:まずは、皆さんがメインで行っている活動を教えてください。

弘至さん:私たちは、農家、小売店、家庭など様々な場所で出る廃棄花の中でも、特にお店での廃棄が気になっていて、ここ数年長く楽しめることができるドライフラワーを手がけるようになりました。中でも、カラーリング(着色)をすることで花をもっと息の長いものにし、お店での廃棄を減らすことに取り組んでいます。

由希乃さん:私は、特にコロナ禍で多くのロスが出ているというニュースを聞き、お花農家さんをなんとかしたいという想いで、栃木県のカーネーション農家さんの支援をしました。現在は社会人1年目なのですが、大学生の頃はロスフラワーを使ったワークショップの開催を通して同年代の学生に楽しみながら学んでもらう活動も個人的に行っていました。

春佳さん:新型コロナによる影響を受ける前は、結婚式で使われた花を回収し、ドライフラワーにして装飾という形で再利用していました。新型コロナが広がり始めてからは、結婚式をはじめとする多くのイベントが中止になっただけでなく、オリンピックも延期になったことで、時間をかけ、タイミングを合わせてつくられていた花が行き場を失いました。そんな在庫過多なロスフラワーを救いたいと、花農家さんと消費者をつなぐオンラインショップ「フラワーサイクルマルシェ」を開設して販売しています。

ゲストトークの様子

花瓶もオアシスもいらない。サステナブルに花を楽しむヒント

ロスフラワーを減らすための皆さんの取り組みやコロナ禍での課題も見えてきたところで、続いてのトピックは「実際にお花を取り入れる方法」に移ります。

希さん:次のテーマは「お花を暮らしに簡単に取り入れるためのヒントや方法」。ただ取り入れるだけではなく、一度買った花を自宅で長く楽しむことができるサステナブルな取り入れ方にはどのようなものがあるでしょうか?

弘至さん:お花を長く楽しむためには、花の知識や育て方のコツを知る必要があると思います。そのために、私たちはお客さんが買いに来られる際に、ドライフラワーになりやすいお花や、どうすればドライフラワーにしやすいかなど作り方までしっかり伝えるようにしています。お花屋さんなどが当たり前にやっている作業でも、他の人にとってはそうでない、知られていないことが多いと思うので、まだまだ伝えられることがあると感じていますね。また、動画やSNSを、今回のようなZoomを通したイベントなどを通じて日常的にお花屋さんがやっていることを伝えることは、消費者にとって花を楽しむヒントになるはずです。お洋服を買うような感じでドライフラワーを買ってくださるお客さんもいるので、そういった方の自宅の部屋の写真を見ながらお花の配置場所の相談に乗ることもありますよ。

希さん:お花のコーディネートもしてくださるんですね。

鮎美さん:あとは最近、「エコフラワーアレンジメント」というものを提案しています。フラワーアレンジメントには、オアシスという、水を含ませて用いるスポンジを使用するのですが、花を飾るにはそういうものをきちんと使わなくてはいけないと思っている人もいると思います。今回提案しているエコフラワーアレンジメントは、オアシスを使わずに花をそのまま花瓶にさすもので、花瓶とセットで販売しているんです。その花瓶を使って次はどういうお花を飾ろうかと考えてくださる方もいますね。

エコフラワーアレンジメント @greenpiece_inc

希さん:花瓶が付いてくることで、花が枯れてしまってもまた違う花を買おうという気になる。まさに次につながる買い方ですね。実際に私の友人の中にも、お花をもらっても花瓶がなくて困ってしまうという方がいます。そういう人が花瓶付きで花を受け取ることで、お花の魅力に気付くようになるかもしれないですね。

春佳さん:お花をどうやって飾ったらいいか分からない方は多いと思うので、こう飾ったら良いよ、という説明があるのはとても親切だと思います。多くの方がお花の「正しい飾り方」を気にしている方もいらっしゃると感じられますが、私はその必要はないと思うんですよね。例えば、もし花瓶がなくても、グラスやワインボトルやビール瓶、ドレッシングの瓶など、おうちにある水が入る器であればなんでも花瓶代わりになります。「お花を飾る」ことに対して、もっと気軽に楽しんでもらいたいと思いますね。

@shiooont

──これまで花を飾るにはオアシスが必要、ちゃんとした花瓶にささないといけないと思っていた人にとっては、「あれ、そんな感じでいいんだ!」と意外に思われた方もいるかもしれません。その他にもこちらのパートでは、サステナブルな花の楽しみ方として、ドライフラワーの作り方について教えていただきました。ドライフラワーにするのにおすすめの花は、乾燥しやすいバラやケイトウ、カスミソウなど。作り方は、花をエアコンの真下や出入りするドアの近くなど、風通しのいいところに吊るすだけと意外に簡単です。また着色することで、3、4年間ほど飾っていても色褪せないドライフラワーもあるとのこと。

女性だけのものではない。花は男性にこそ買ってほしい

──さらに、女性だけでなく男性にもお花を持ってもらいたいという河島さんの言葉から、男性にとって、また性別問わず花がもっと身近になるアイデアが続々と出ました。

例えば、お花と何かをセットで販売するアイデア。既にパンと花をセットにして手ごろな価格で販売するパン屋もあるようで、そのような「花×○○」のかけ合わせは、より花の購入のハードルを下げ、自由に楽しめるだろうとの声も上がりました。

実際に「お花×古物」で商品を製作している金森さんにお写真を見せていただきました。

古物と花 @greenpiece_inc

弘至さん:私たちは本物の古物とお花を掛け合わせて商品を作っています。男性もかっこいいと思えるようなものになっています。

希さん:色々な形でお花とのコラボレーションができますね。まだ私たちが想像していないものとお花が組み合わされば、と思うとワクワクします。

──長い間楽しむことができ、男性も女性もより気軽にお花を取り入れられるヒントを教えていただいたところで、話は「花と人のつながり」に移ります。

人の心を癒し、彩る。花が秘める沢山の魅力

希さん:最後のトピックは「花と暮らし」、「花と心の豊かさ」について。何かエピソードはありますか?

由希乃さん:以前、老人ホームでロスフラワーでつくったプリザーブドフラワーを用いてフラワーセラピーをしたことがあります。認知症の方に花に触れていただき心を癒していただこうというイベントを開いたのですが、そのとき普段あまり口を開くことのない方が話してくださったり、写真に写りたがらなかった方がお花と一緒に笑顔で写真に写ってくださったりということがありました。年齢など関係なく、「花」という共通言語で盛り上がり、そのとき初めて「お花の癒し効果」を実体験を持って感じることができました。花育(※1)など子どもを巻き込む活動だけでなく、ご高齢の方とも楽しめるの花の活動もあるのではないかと思います。

──また、別の形で改めて花の持つ力を感じさせてくれたのが、コロナ禍で行われた「フォトウェディング」です。

弘至さん:今回、新型コロナで結婚式を延期・中止された人たちの写真を撮るフォトウェディングをしました。プロのカメラマンさんと組んで、30組のカップルに参加いただきプレゼントをするという企画です。テレビ取材もしていただき、フォトウェディング後の様子も見ることができたのですが、ご家族含めてすごく感動して、泣いて喜んでくれていました。お花をやってて良かったと思った瞬間でしたね。スタッフも写真を何度も見直してみんなで泣いていました。今回のフォトウェディングは、ただきれいとか美しいというだけではなく、参加者の方の人生の中で心に深く残る何かを残したのではないかと思います。

image via greenpiece

希さん:写真では、人の自然な笑顔がはじけているように見えますね。それはお花があるからだと思います。まさに花と心の豊かさのコラボレーション。新型コロナが落ち着いて通常の結婚式ができるようになってからも、花と一緒に写真を撮る「フォトウェディング」は広まっていきそうですね。

弘至さん:コロナで延期になってよかったですとを言ってくれる人までいて、やってて良かったなと思いました。お花屋さんでフォトウェディングを取ることはなかなかないと思うのですが、花屋だからできることもあると思うので、こういうものも全国に広がるといいですね。

希さん:第一部を通して、お花を買ったことがない方、取り入れ方が分からない方も、買った後どのように楽しめるかが分かり、お花をより身近に感じられるようになったのではないでしょうか。今回教えていただいた農家さんの現状やロスフラワーのこと、花を楽しむためのヒントをこれから少しでも意識しながら花の消費を盛り上げ、ロスフラワーを救っていけるといいですね。

「普段あまり花を買わない人が思わず花を買ってしまうようなキャンペーン」を考えよう

──ここからはイベント後半のワークショップに移っていきます。

「普段あまり花を買わない人が思わず花を買ってしまうようなキャンペーンを考える」という企画で、特に若者にお花をより身近に感じてもらえるようなアイデアを考案してもらいました。

春佳さん:お花を買ってもらう層を若い10代、20代に広げたいと思っています。というのも、とある統計データによると、購入者の年齢層が若くなればなるほど単価が低くなります。60代くらいの方だと年間1万円ほど買うのですが、10代、20代の人は年間1000円くらいしか使わないんですね。お花を通して感謝を伝えたり、手土産としてもコミュニケーションが広がるのにもったいないなと感じています。このような背景で、キャンペーンのターゲット層を若者に限定しました。

@shiooont

──今回は、6つのグループに20分という短い時間でキャンペーンのアイデア(キャッチコピー、キャンペーンを行う主体、ハッシュタグ、内容など)を発表していただきました。

花のインスタ映えを狙う、フルーツ狩りならぬ「花狩り」や花のスタンプラリーキャンペーン、ビアガーデンやビアバーなどで若者がクラフトビールと一緒にお花を楽しめる「#Beer&Flower」、花をインテリアとしてもっと身近に感じてもらう「#お花をインテリアに」のほか、通勤通学時に買うコーヒーに花をプラスする「#コーヒー1杯に1輪の思いやりを」、またカフェだけでなく、アパレル店や雑貨屋での花の販売といった意見も出ました。そしてゲスト・参加者・審査員の小川教授の心を掴んだのは「花びら販売と道端ブーケ」というアイデアです。

「花びら販売は、その名の通り、傷みはじめた花のまだ綺麗な花びらをちぎってを安く売るというアイデア。花びらはお風呂に浮かべたりして使うことができます。また、道端ブーケはお花屋さんなどが池垣に花を挿していき、花でできる道をつくり、誰でも自由に持って行けるようにするというものです。野菜が売られている無人販売所みたいに、100円で好きにとってもいいようにする期間をつくったり、子ども向けに花びらの色を変える実験ワークショップなどをやってみたりしてもいいかもしれません。(グループの発表者の方)」

image via Unsplash

小川先生:ユニークさ、実現可能性という点から、「花びら販売と道端ブーケ」のアイデアが特に素晴らしかったと思います。また、カフェ等の案もいくつかありましたが、実際ユニクロや無印良品店などの一部の店舗でお花の販売などが始まるなど、ファッションや雑貨のお店で取り扱われるようになってきました。アメリカなどではブランドショップの装飾でお花をたくさん使っているところもあります。少しずつアクションを起こして、日本にお花を贈る文化が浸透していければ良いと思いますね。

編集後記

トークセッションから懇親会まで約3時間。予想以上の盛り上がりで今回のイベントは終了しました。トークセッションでは、一人ひとりにとって花との距離が近づくようなヒントが溢れたほか、花と人とのつながりを再認識させてくれるような温かいエピソードもありました。老人ホームでのフラワーアレンジメントを使った交流や、コロナ禍でのフォトウェディングのお話からは、「人の心を癒し、笑顔にする」そんな花の秘めた魅力を感じることができました。

懇親会では、参加者の方が「#道端フラワー」キャンペーンを提案してくださいました。各々が自分が素敵だと思う花の写真をハッシュタグと共に投稿し、Web上を花で溢れさせるというアイデア。美しいお花の力で、不安な世の中で日々感じているストレスや疲れも癒されるかもしれません。是非、読者の皆さんも「#道端フラワー」で投稿してみてください。

ゲストの方のお話の中で、「お花は生活必需品ではないと言われるが、それは認めたくない。」そんな言葉も聞かれました。確かに食べ物などとは違って、お花がなくても人は生きていけるかもしれません。しかし、仕事をするとき、ご飯を食べるとき、自分のそばにたった一輪でもお花があることで、癒されたり、元気がもらえたりすることがあります。大切な人に、自分のために一輪の花を贈ることから始めてみてもいいかもしれませんね。

※1 花や緑を教育や地域活動等に取り入れる取り組みで、幼少期の子どもへの取り組みが重要視されている。

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