「超スロー」で動くナマケモノロボットが、絶滅危惧種を救うワケ

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いま世界では、希少種や絶滅が危惧されている生態系を保護するために最先端技術が使われている。2018年に富士通が、オーストラリアで絶滅危惧植物の保護に向けて、ドローンとAIを活用したビデオ分析を行ったほか、日本でも2019年、環境省とNTTドコモが、沖縄県での希少種の密猟・密輸防止対策として、ドコモの画像認識AIを活用した実験を実施した。

さまざまな科学技術が生態系の保護のために用いられている中、今回開発されたのが、絶滅危惧種の保護に一役買うナマケモノロボット「SlothBot」だ。現在、開発者である米ジョージア工科大学が、アトランタ植物園でいくつかの絶滅危惧種を救うためのテストを行っている。

(c) Rob Felt, Georgia Tech

SlothBotは、2本の大きな木の間に張られたケーブルに沿って移動し、植物園の温度や天気、CO2レベルなどの情報を監視する。ゆっくりと動き、エネルギー効率がいいため、何カ月あるいは何年も継続して滞在することでしか見られないものを観察できるのが特徴だ。ソーラーパネルで稼働し、必要なときにのみ動くようにプログラミングされており、バッテリーの再充電が必要になると太陽光を見つけて移動する。

全長は約90センチメートルで、3D印刷された外殻がモーターやギア、バッテリーやセンサー機器を天候から守る。いま実験を行っているアトランタ植物園では長さ30メートルのケーブル1本の上を移動しているが、より広い場所ではケーブル同士を伝った移動も可能だ。

研究チームは、SlothBotを開発する前に他の種類のロボットについても検討を行った。車輪付きロボットは一般的だが、自然界では簡単に倒れる可能性があり、また飛行ロボットは多くのエネルギーを必要とする。そんな中、当研究を率いた同大学のマグナス・エゲルシュテット教授は、コスタリカのブドウ園に行ったときに見た、頭上のワイヤーを這うナマケモノにインスピレーションを受け、SlothBotの開発を決めた。ゆっくり動くことは今日のロボットの一般的な設計方法ではないが、火星探査車をはじめとするいくつかのロボットシステムは、低速であることの価値をすでに実証している。

(c) Rob Felt, Georgia Tech

アトランタ植物園の保全研究担当副所長であるエミリー・コフィー氏は、「SlothBotは、花粉媒介者の行動や植物と動物の相互作用、また他の方法では観察するのが難しい現象を理解するのに役立つ。」とジョージア工科大学のホームページで述べている

さらに自然環境保全のほかに、作物の病気の早期発見や湿度測定、昆虫の蔓延監視といった精密農業への使用が期待されるSlothBotは、アトランタ植物園での試験後、南米で蘭の受粉や絶滅危惧種のカエルの生活の観察に使用されることが予定されている。

これまでのロボットとは一味ちがう、ゆっくり動いて自然環境を長期間監視するナマケモノロボットSlothBotは、見た目もかわいく親しみやすい。植物園の人気者として任務を果たし、今後いろいろな所で活躍していくことだろう。

【参照サイト】‘SlothBot in the Garden’ Demonstrates Hyper-Efficient Conservation Robot
【参照サイト】絶滅危惧植物の保護に向け、ドローンとAIを活用したビデオ分析を実施
【参照サイト】環境省とドコモ、沖縄県の空港や郵便局における画像認識AIを活用した希少野生動植物の密猟・密輸対策の実証実験を開始
(※画像:ジョージア工科大学より引用)

Edited by Tomoko Ito

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