世界銀行によると、現在世界の人口の55%が都市に住んでおり、2050年までには世界の人口の70%近くが都市に住むようになる。つまり都市化が進むのだが、世界のGDPの80%以上は都市が占めているため、そこで新しいアイデアを育んで生産性を上げていけば、都市も社会全体の持続的な発展に貢献できるという。
都市化がもたらす問題といえば、食料危機がそのひとつだ。タイのタマサート大学は、地域のフードセキュリティの確保を支援するため、首都バンコクの近くのキャンパスに236806平方フィート(約22000平方メートル)の広さを誇る屋上農園「Thammasat Urban Rooftop Farm(TURF)」を作った。同農園は、屋上を使ったオーガニック農園としてはアジア最大の広さであるという。
TURFでは米、野菜、フルーツ、ハーブなど40種類以上の食用作物が栽培され、年間20トンものオーガニック食材を育てられるという。これらの食材はキャンパス内での食事に使われ、さらにキャンパスの食堂で食品廃棄物を集めてコンポスト化もする。また、同農園では年間を通して持続可能な農業に関するワークショップを開催し、地域に開かれた学びの場を提供していく。
TURFのデザインは、東南アジアの伝統的な農法である棚田を参考にしているという。雨が降ったときには雨水が階段状の農地をゆっくりと流れ、地下に浸透しきれいに濾過された水となりながら、作物を育てていく。また、雨水が流れていった先には4つの貯水池があり、すべて合わせて3095570ガロン(約1170万リットル)の水を貯めておける。干ばつに備え、豪雨時に雨水を貯蔵しておく仕組みだ。
通常の棚田がそうであるように、TURFは洪水被害を小さくすることができる。同農園の設計者は、「洪水が起こるバンコクだからこそ特に、屋上農園がもっと普及するべきだ」と、South China Morning Postに対して語っている。
モダンな風景と伝統的な農村風景を融合させ、持続可能な食料生産のみならず食品廃棄物の再生利用や水管理についても、多くの示唆を与えてくれるタマサート大学の屋上農園。これからいかに都市空間をデザインしていくべきか、私たちは問われているのではないだろうか。
【参照サイト】 The World Bank|Urban Development
【参照サイト】 LANDPROCESS
Edited by Erika Tomiyama