本を読むだけじゃない。サーキュラーエコノミーを「体感」しながら学べる、ハノイのVAC図書館

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図書館といえば、室内に所狭しと本が並ぶ様子を思い浮かべるだろう。だが、そんな一般的なイメージとはかけ離れた不思議な構造の図書館があることをご存じだろうか。

VAC Library

Image via Farming Architects

ベトナムのハノイにあるVAC図書館の外観は、図書館というより「公園」だ。敷地内には緑があふれており、中央スペースでは鶏が、池では鯉が飼育されている。木の枠を組み合わせて作られたメインの建物は、まるで「ジャングルジム」のよう。子どもたちは、この「ジャングルジム」風の木枠を自由に登りおりしながら、備え付けの本箱から好きな本を選ぶことができる。

VAC Library

image via Farming Architects

このVAC図書館は、ベトナムのファーミング アーキテクツ社によって建設されたものだ。図書館の名にあるVACとは、「作物栽培」「水産養殖」「畜産」を組み合わせた複合型の農業システムのこと。それぞれの生産システムを象徴する「庭(Vuon)、池(Ao)、家畜小屋(Chuong)という3つのベトナム語の頭文字をとってVACという名称がつけられたという。

VACシステムの特徴は、「循環するエコな農業システム」であることだ。その中心となるのは「アクアポニックス」というメソッドである。これは、魚を飼育する「水産養殖(『アクア』カルチュア)」と、土ではなく水で植物を栽培する「水耕栽培(ハイドロ『ポニックス』)」の2つを掛け合わせた農業方法である。

魚の排出物は微生物によって分解され、植物がそれを栄養分として吸収、浄化された水は魚のいる水槽へと戻される――というように相互に影響しあい、循環するような仕組みになっている。

VAC図書館

Image via Farming Architects

ファーミング アーキテクツ社は「都市環境でも、自然エネルギーを循環させながら異なる動植物を一緒に育てられるように」との想いから、VACシステムを再デザイン。狭いスペースでもVACシステムがきちんと機能するようにしたのだという。

図書館では他にも、太陽光発電で施設の電力をまかなったり、庭の肥料に鶏の糞を利用したりといった工夫が施されている。子どもたちはそういったさまざまなアプローチを間近で見て「都市でも自給自足は可能だ」ということを自然に学んでいくのだ。

VAC Library

Image via Farming Architects

国連の調査によると、今後30年ほどの間に世界人口は約20億人増加し、人々の食料をまかなうため現在の2倍もの農産物が必要になることが予想されている。田舎だけではなく都市でも、安全で新鮮な食糧を生産できるようにしていく必要があるということだ。都市の限られたスペースでも、環境にやさしく効率的に動植物を育てることができるVACシステムは、食糧問題解決の糸口になるかもしれない。

森の中にいるような解放感がある不思議な図書館で、本を読みながら植物や動物が互いにつながるようすを間近で観察できる。こうした「五感を使って学べる場所」は、デジタル化が進んでいる現代だからこそ重要な意味を持つのではないだろうか。

【参照サイト】Farming Architects
【参照サイト】NATIONAL GEOGRAPHIC “The Future of Food”
【関連ページ】アクアポニックスとは・意味
(※画像はFarming Architectsより提供)