近年、石油や石炭などの化石燃料の代わりに水素の利用が進められている。水素は燃焼してもCO2を発生せず、さまざまなエネルギー資源から製造可能。熱や電気として利用できるためエネルギー効率が高いことが特徴である。
今回、この水素に注目したのが、航空機製造世界大手の仏エアバスだ。同社は、2020年9月に水素を燃料とする世界初のゼロエミッション民間航空機「ZEROe」の3つのコンセプトを発表。2035年までの就航を目指すことを明らかにした。
航空業界のCO2排出量は全世界の約3%、人為排出量全体では2%を占めており、2050年には3%に達すると予測されている(※1)。脱炭素化を目指して電気飛行機やハイブリッド電気飛行機の開発が各企業で行われている中、今回エアバスが注目したのは水素だった。
同社は、水素がクリーンな航空燃料として期待できるものであり、航空宇宙や他の多くの産業がカーボンニュートラルを達成するための解決法になると考えている。水素を燃料とする世界初のゼロエミッション民間航空機の3つのコンセプトは、以下のとおりだ。
ターボファン設計:乗客数は120〜200人。航続距離は2,000海里(約3,700キロメートル)以上で、大陸横断に使用できる。ジェット燃料ではなく、水素で稼働する改良型ガスタービンエンジンを動力源とするジェット機タイプ。液体水素は、後部圧力隔壁の後ろにあるタンクに貯蔵されて分配される。
ターボプロップ設計:乗客数は最大100人。航続距離は1,000海里(約1,850キロメートル)以上で、短距離路線向き。ターボファンの代わりにターボプロップエンジンを使用し、改良型ガスタービンエンジンの水素燃焼を動力源とするプロペラ機タイプ。
ブレンデッドウィングボディデザイン:乗客数は最大200人。航続距離は2,000海里(約3,700キロメートル)以上で、大陸横断に使用できる。翼が航空機の胴体と融合する印象的なデザインで、広い胴体が水素の貯蔵と分配、およびキャビンのレイアウトに選択肢を多く提供する。
「航空業界の未来をサステナブルにするために、再生可能エネルギーと水素利用を拡大しなくてはなりません。この課題に取り組むためには、空港の通常業務に必要な水素輸送と給油インフラストラクチャが必要です。そして、航空会社が環境に優しくない古い航空機を早く引退させられるようにするには、研究や技術、デジタル化やサステナブルな燃料使用を促進する仕組みへの資金提供を増やすための政府による支援が必要となります。」と同社はプレスリリースの中で述べている。
航空機産業全体の脱炭素化を先導するという目標に向けて、ゼロエミッション飛行達成のための技術や方法を探求するエアバス社。今回の同社のコンセプト発表を皮切りに、航空機の開発における水素利用がどう進んでいくのか、今後の動向に注目だ。
【参照サイト】Airbus reveals new zero-emission concept aircraft
(※画像:エアバスより引用)
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Edited by Tomoko Ito