私たちは製品が劣化したとき、ほとんどの場合は新しく買い換えようと思うことが多いだろう。もしくは壊れた家電製品を修理に出そうとしても、価格の問題から諦める。仮に修理をしようと考えて持ち込むまでの行動力があったとしても、メーカーに「もう部品がないので修理できない」と言われて、諦めざるを得なくなる。あるいは、持っているものを修理するより新しく買い替えるほうが安いことがわかり、釈然としないものを感じる──そんな経験をしたことはないだろうか。
ひとつの製品をできるかぎり長く使えたほうが、廃棄物が減って環境に優しい。欧州委員会の世論調査「ユーロバロメーター」によると、欧州市民の77%は製品を交換するよりも修理したいと考えており、消費者の修理への需要も高いことがわかる。消費者にとって、修理ができるかどうかがわかりやすく可視化される仕組みはないだろうか。
フランスでは2021年1月から洗濯機、電動芝刈機、テレビ、パソコン、タブレット、スマートフォンに、製品がどれだけ安価に簡単に修理できるかを示す「修理可能性指数(Indice de réparabilité)」を表示することが必須となった。これは「1」から「10」までの数値で表示され、10に近づくほど修理がしやすいことを意味する。数値はレンチのアイコンとともに表示され、修理のしやすさに応じてマークが色分けされる。
修理可能性指数は、メーカーが提出するドキュメントの品質、分解できる製品かどうか、スペア部品の入手可能性、スペア部品の価格など、複数の基準に基づいて決定される。たとえば洗濯機とスマホのように製品寿命に違いがあるものについては、査定の仕方も変わるという。
フランスがこの施策を開始した背景には、欧州議会が2020年11月の決議で消費者の「修理する権利」を認めたことがある。EU域内のサーキュラーエコノミーへの移行を加速させる狙いで、同決議には、修理可能性の改善や修理に関する情報へのアクセス改善が含まれており、修理可能性指数の導入はこの決定を踏まえた具体的な取り組みといえる。
気に入ったものを長く大切に使えるように、これからも様々な国で消費者の修理する権利が促進されることを期待したい。
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Edited by Erika Tomiyama