ポイ捨てのない社会を目指して、2002年から街中のごみ拾い活動をはじめたNPO法人グリーンバード。今や国内外に約80の活動拠点があり、年間約3万人もの人が参加する活動へと成長している。
そのグリーンバードが、全国各地でポイ捨てされたプラスチックごみを活用して、アップサイクルするプロジェクト「RETTER」を開始。その第一弾として、コースターを製品化した。
色鮮やかなコースターに込めた思いとは。NPO法人グリーンバード 代表理事の福田圭祐さんにお話をうかがった。
海洋プラスチックの7~8割が街から出ている
グリーンバードでは街のごみ拾い活動に加え、2017年から海の環境問題について、親子向けのイベントを開催するなど、多くの人にごみ問題を考えてもらうための取り組みを行ってきた。しかし、福田さんによると、「街のごみが川をつたって海に流れ出ているということを知らない人がまだ多い」という。
海には、毎年800万トンものプラスチックが流出(※1)。クジラや海鳥、カメだけではなく、小さなイワシからもプラスチックが検出されるほど汚染されてしまっている。一体どこから大量のプラスチックが流れ込んでいるのだろうか。あるドイツのヘルムホルツ環境研究センターによると、海に漂うプラスチックの7~8割は河川から流出したごみだという(※2)。
河川に流れ込むごみの要因の一つが散乱ごみ。街中でポイ捨てされたごみは風に舞い、雨に流され、川へとたどり着く。やがて川に流れに飲み込まれたごみが海へたどり着くのだ。その証拠に、海辺でごみ拾いをすると、ペットボトルや洗剤のボトルなど陸で使われているプラスチックを簡単に見つけることができる。
もっと人々の関心を高められないか。そう考えたグリーンバードは、拾ったごみを長く愛着を持って使いたくなるようなものに生まれ変わらせることにした。ごみをポイ捨てしない心を育むために、集めたプラスチックごみをコースターとして製品化したのだ。
「これまではごみを拾って終わりでしたが、これからは拾ったごみをさらにアップサイクルすることによって、”拾う”というアクションに新たな価値を見出していく設計ができればと思います。」
グリーンバードの「多様性」
集めたプラスチックごみは洗浄し、細かく粉砕。フィルムに挟みプレスして成型している。拾う時期や場所によってごみの種類や汚れ具合が異なるため、一つとして同じデザインはないのも魅力の一つ。色の出方が異なり、個体差があるのはグリーンバードが大切にしている「多様性」にも通じる。
来年20周年を迎え、国内だけではなく海外にも活動の広がりを見せるグリーンバードだが、立ち上げた時と変わらないことがある。それは参加者層の多様性。その地域に住み人、働く人、学ぶ人。性別や世代、立場などの垣根を越え、多様な人が参加している。参加動機もSNSで見た人もいれば、会社のCSR活動の一環で参加する人、友達に誘われて参加する人などさまざまだ。
「グリーンバードの活動はごみ拾い活動なんですが、それはきっかけであり、ごみ拾いを通じて、普段では出会う機会のない人同士がつながる、コミュニティをつくっていくことを大切にしているんです」と福田さんはいう。
こうしたコンセプトが実を結び、2018年の西日本豪雨で岡山県真備町が水害に遭った時には、岡山のチームがすぐに活動を開始。福田さんによると、活動を通して地域の人たちが団体を知っていたため、「消防団でも町内会でもないグリーンバードに頼ってくれた」という。日頃から多様性とコミュニティづくりを大切にしてきた成果と言えるのではないだろうか。
RETTERに込めた想い
散乱プラスチックごみを製品化するプロジェクトの名前「RETTER」は、ポイ捨てされているごみの英語「Litter」を元に、「再び」という意味を持つ「Re」を掛け合わせた造語だ。
代表の福田さんによるとこの「RETTER」には「ごみが再び商品となって人の手に戻り、愛着のあるモノとして人々の手元で長く愛される存在になってほしい」という意味を込めており、”MOTTAINAI”のように、地球環境を守る世界共通言語になることをめざしているという。
行動を起こすきっかけに
グリーンバードでは、今回ご紹介したコースター以外にも、タンブラーボトルやマグカップ、マイバッグなども合わせて販売している。それは「グリーンバードの活動が、ポイ捨てのない社会をつくることだから」。
ポイ捨てごみの発生を防ぐことにつながる、マイボトルやマイバッグの持参、さらには、今回ローンチしたコースター「RETTER」を購入することもグリーンバードの活動の一つになる、と福田さん。「ごみを拾う以外にもできることはある。RETTERを通して私たちの活動を応援していただければ」と語った。
福田さんはグリーンバードの活動の目標は「活動を終わらせることだ」と言い切る。つまりはごみを拾う必要のない街をつくること。「この1枚のコースターをきっかけに、生活を見直したり、環境問題のことを調べたり、活動に参加したりと、さまざまなアクションが生まれたらと思っています。“ごみを生まない・捨てない”と、一人でも多くの方が行動を変えてくれれば、きっと世の中は変わるはず」。
福田さんの言葉に力が入る。海洋プラスチック問題の解決のカギは経路を辿れば確実に「陸」にある。カラフルなコースターが起こす意識改革。多くの人に響くことを期待したい。
※1 Neufeld, L., et al. (2016)
※2 ドイツのヘルムホルツ環境研究センター(UFZ)
【参照サイト】RETTER
【参照サイト】greenbird
【参照サイト】greenbird store
【参照サイト】ポイ捨てされた”プラスチックごみ”から生まれたプロジェクト「RETTER」
Edited by Kimika