近年、オンラインショッピングの増加が、都市部の交通渋滞の原因のひとつとなっている。2020年1月に発表された世界経済フォーラムのレポートによると、Eコマースによって、世界の大都市の道路を走る配送車両の数は、2030年までに36%増加すると試算されている。
それらの車両がすべてCO2排出車両であった場合、CO2排出量は32%増加するという。しかし、配送車両をすべて電気自動車に切り替えれば、排出量を現在より30%削減できるだけでなく、経済的コストも25%削減できると報告されている。
そんな中、オランダ政府は「2025年までにCO2排出車での配送を禁止する計画」を発表した。この禁止措置により、2030年までに毎年100万トンのCO2を削減することができるという。この量は、オランダのハーグおよびロッテルダムにある全世帯の天然ガス消費による、年間CO2排出量の合計に相当する。オランダ政府はこの措置によって大気汚染を止めると同時に、市民がより健康で快適な都市生活を送ることを目指している。
すでにオランダ国内の14都市が、この2025年の「ゼロエミッションゾーン」の導入を表明しているが、2021年夏までにはさらに約30都市に広がる見込みだ。オランダのアムステルダムやロッテルダム、ユトレヒトでは、一部のゼロエミッション車以外の車種を禁止する「MILIEUZONE(環境ゾーン)」がすでに導入されている。
この措置の主な目的は、企業や運送会社が、都市での仕事を続けられるようにすることでもある。オランダ政府は、運送会社が電気自動車の購入やレンタルにかかる費用として最大5,000ユーロ相当の補助金を提供することにより、運送業界の脱炭素化を支援している。中小企業には、追加措置もあるという。州・自治体は現在、送電網の管理者と連携し、電気自動車のための充電インフラの拡充に取り組んでいる。
ルノーの調査によると、他のヨーロッパの都市でも、こうした「環境ゾーン」の設置が増えているという。ドイツでは、2018年1月1日からベルリン、ケルン、ハノーファーの3つの都市で「Umweltzone(環境ゾーン)」を導入。ロンドン中心部でも2019年4月8日、「ULEZ(Ultra Low Emission Zone)」と呼ばれる「超低排出ゾーン」の適用が開始されており、基準を満たしていないディーゼル車には、1日あたり最大約1万5千円(2021年4月時点)の罰金が課せられている。
東京都も、2050年までに世界のCO2排出実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」の実現を目指すため、2019年12月に「ゼロエミッション東京戦略」を公表。都内温室効果ガス排出量を2030年までに50%削減することを目指している。今後、どのような対策が行われるのか、世界の動きに注目したい。
【参照サイト】 New agreements on urban deliveries without CO2 emission
【参照サイト】 These Dutch cities will allow only zero-emission deliveries by 2025