オーストラリア先住民の知恵が詰まった「自然のバーム」文化継承と自立の一助に

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オーストラリア大陸に暮らす先住民アボリジニ(Aborigine)を知っているだろうか。オーストラリアで古くから多様なコミュニティや社会を構成している人々で、200種類を超える文化や慣習・言語などを持つ。最近、オーストラリア国内では多様性への配慮から「アボリジナル」「アボリジナル・オーストラリアン」などと呼ばれている(※1)

そんなアボリジナルの人々の失業率は18.4%で、アボリジナルの人々以外のオーストラリア人の失業率(6.8%)の2.7倍にも上る(※2)。また、植民地政策で生活スタイルの変更を強いられてきたことで、昔から伝承されてきた文化が廃れていくことが問題となっている。

そこで、オーストラリアの社会企業The Bush Balm® social enterprise(ブッシュバーム社会企業)が、経済的自立と文化継承の問題を同時に解決する画期的なビジネスモデルを作り出した。

ブッシュバーム社会企業は、アボリジナルの人々が自ら運営している腎臓病の透析施設「Purple House」から生まれた企業で、アボリジナルの知恵を活かしたバームやクリームの開発、販売を行っている。製品は、アボリジナルの人々が昔から病気やケガの治療に使ってきた固有種の野生の薬草と、自然由来の素材だけを配合しているのが特徴で、オンラインや実店舗で販売している。

作り手は、働ける状態にある腎臓病の患者や、看病する家族だ。安定した収入が得られるのはもちろん、作り手たちが自分たちの固有の文化を伝承し、誇りを持ちながら働くことができるのも魅力的な点だ。

現在、発売されているブッシュバームは2種類。1つはArretheという薬草とオリーブオイル、ミツロウが入った「Arrethe Bush Balm®」で、湿疹、乾癬、皮膚炎、乾燥に伴う皮膚のかゆみを和らげる効果が謳われている。もう1つは、関節炎、筋肉と関節の炎症、打撲の傷や風邪症状の緩和のために塗る「Irmangka Irmangk Bush Balm®」で、Irmangka Irmangkaという草とオリーブオイル、ミツロウで作られている。

なお、この取り組みは消費者にも大きなメリットがある。Bush Balm®はアボリジナルの健康の知恵が詰まった、無添加、自然由来のプロダクトなので、消費者はこれを買い、使うことで、より健康な毎日を送ることができる。Bush Balm®の生産・販売は作り手、買い手みんなのウェルビーイングにつながる取り組みになっているのだ。

世界各地の他の先住民族も、高い失業率や貧困の連鎖に苦しんでいる。こうした中、ブッシュバーム社会企業のような、古来より伝承されてきた知恵を活かした先住民族たち自身の手による製品開発は、問題解決の大きなヒントとなるだろう。

※1 「アボリジニ」という言葉は、オーストラリアの植民地時代から差別的な意味合いで使われてきており、文化・言語集団が分かれていたオーストラリア先住民たちを一つのグループとして認識していることから多様性に鈍感だという言説があり、近年のオーストラリアでは呼称としてあまり使われていない。
※2 CHAPTER FOUR EMPLOYMENT ― Australian Government
【参照サイト】Bush Balm
【参照サイト】Purple House

Edited by Kimika

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