気候変動により、40度近くまで気温が上昇する「酷暑」はもはや“夏の風物詩”となった。2020年5月には、北海道で30度を超えたニュースが記憶に新しい。
日差しが照りつける暑い日は、クーラーのきいた涼しい部屋やオフィスにずっといられればいいが、そうもいかない。アスファルトの照り返しが強烈な夏場の徒歩移動には、熱中症にかかる危険がつきまとう。都会では街路樹が少なく、太陽の光から逃げ込む場所も限られるのでなおさらだ。徒歩で移動する際、少しでも涼しい日陰をたどって、道路の右に行ったり左に行ったりしてしまう人は多いのではないだろうか。
夏場に思わず日陰を求めてしまう人々の行動に目を付けたのは、スペイン・バルセロナにある都市開発公共機関Barcelona Regionalだ。「歩行者の夏の移動を少しでも快適にしたい」という思いから、日陰を通るルートを作成するアプリ「Cool Walks」を発表した。
Cool Walksは、バルセロナ市が気候変動対策として取り組む「気候計画」に基づき、「過度な暑さを防止する」という視点から作られている。ルート内のどこに日陰ができるかを可視化し、快適で安全な道順を導き出してくれることが特徴だ。
太陽のある位置とは反対方向に出現する日陰は、時間帯により出現場所が移り変わっていく。そこでCool Walksは時間帯ごとの日陰状況に応じて、日陰の濃さを5種類に分類した。
ルートは3種類から選択ができ、最短経路モードは通常の地図アプリと同じく「日陰を気にしないから一刻も早く到着したい」人向け、日陰モードは「早く着きたいけど涼しい方がいい」人向け、ヴァンパイアモードは「直射日光は絶対に避けたい」人向けと、それぞれのニーズにも対応している。
ほかにも、街中にある給水スポットや、暑さから一時的に逃れるシェルター(涼しい建物)の表示が可能で、歩行者視点に立った細やかな配慮も光る。
地中海性気候に属するスペインの夏は、気温が高く、からっと乾燥している。そのため、日陰に入ってしまいさえすれば涼しさを感じられるのが特徴だ。
Cool Walksには膨大なデータや現地調査が必要なため、現在はバルセロナの一部地域しか対応していない。今後、情報の蓄積や技術開発が進み、このアイデアが世界に広がれば、「日傘とCool Walks」が夏の定番アイテムになる日が来るかもしれない。
【参照サイト】Cool walks: a routing tool for pedestrians
Edited by Kimika