NY発、製品のサプライチェーンを世界地図に自動マッピングしてくれる「Sourcemap」

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2019年7月22日から24日の3日間に渡り、世界テキスタイル見本市「Texworld USA」がニューヨークにて開催された。実際にテキスタイルを手に取ることができるリソースブース、ファッショントレンドのショーケースに加え、「サステナビリティとファッション」をテーマにした教育プログラムが多数開催された。数あるプログラムの中から筆者が参加してきた「トランスペアレンシーとトレーサビリティー」のカンファレンス内容についてご紹介しよう。

カンファレンスの様子

カンファレンスの様子

まずは、登壇者らにより顧客や投資家たちの関心事項が変化してきたということについて語られた。消費者・投資家は、年々、企業に「トランスペアレンシー(透明性)」を求めるようになってきている。原料は何で、どこでどのように加工され商品が作られたのか──そういったデータについて興味を持つ人々が増えているのだ。

国際的な取引が行われている現代においては、たった一つのプロダクトに世界中の数十~数百のサプライヤーが関与していることもある。こうした状況下で完全なトランスペアレンシーとトレーサビリティーを担保するのはかなり難しいといえるだろう。

ビジネスがグローバルに展開され会社が成長するほど、生産プロセス全体が見えにくくなり、管理しづらくなる──こうした問題の解決策の一つとしてカンファレンスで提示されたのがニューヨーク発の「Sourcemap(ソースマップ)」というサービスだ。

Sourcemapの画像

Image via Sourcemap

Sourcemap は、原料調達から加工、商品が店頭に並ぶまでのプロセスを地図上にマッピングしてくれるオンラインサービスである。企業が情報を登録すると、直接的に取引があるところもそうでないところも含め、関係のあるすべてのサプライヤーを自動で探し出し地図上に表示してくれる。

Sourcemapの画像

マッピング情報は、「Open Sourcemap」という一般ユーザー向けのサイトから誰でも確認することができる。上画像は、VANSのスニーカーのマッピング画面。地図上に表示された綿農家、原材料サプライヤー、機織り工場、靴製造工場、配送センターなどが矢印でつながれており、スニーカーが店頭に並ぶまでにたどった道筋を視覚的に理解できるようになっている。| Image via Sourcemap

Sourcemapを利用し生産過程を透明化することで、消費者や投資家のニーズに応えられるのはもちろんのこと、他にも企業にとって大きなメリットがある。

商品在庫を減らしたい、不良品の発生数を抑えたい、確実な日時に商品をお客様のもとに届けたい。企業がこうした悩みをかけていたとしても、どのプロセスに問題があるのかがはっきりしなければ対策を取りようもない。Sourcemapなら生産~供給までのプロセスを、地図上にて一目で確認できる。自身のビジネスの全体像を視覚的に把握できれば、解決すべき課題がどこにあるのか明確になるし、トラブルを未然に防ぐことにもつながるはずだ。

ファッションの生産過程

ファッション業界史上最悪の事故 ラナプラザビルの崩壊事故の様子|Image via shutterstock

私たちが驚くほど安い価格で品物を手に入れることができるのは、どこかで命を削りながら製品を作っている人たちがいるからかもしれない。だがこれまで、消費者である私たちは自分の手にする商品がどこでどのように作られたのかを知る機会はほとんどなかったし、企業ですらすべてのサプライヤーのことを把握できてはいなかった。

これまで見えていなかった「中間のプロセス」を可視化することで、従来気づかれなかった、あるいは放置されていた問題に光をあてることができる。ファッション業界をより良い方向へ導いていくための大きな一歩になると言えるだろう。

【参照サイト】Sourcemap
【参照サイト】Open Sourcemap

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