ノルウェーがウェルビーイング国家戦略を公表

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未曽有のパンデミック、止まらない自然災害、テクノロジーの急速な発達。いくつもの荒波により日々変化する今日の生活環境で、「これからどう生きるか」について以前よりも深く考えるようになった人は多いのではないだろうか。

ある程度国家が経済発展し、衣食住に困らず、教育制度も整備された社会において、人々の人生をさらに豊かにするものとは何だろう。金銭や、物質的な豊かさだけではなく、それは健康や安全、または良好な人間関係だったり、物事に習熟することだったりするかもしれない。

そんな中、北欧のノルウェー政府は、ウェルビーイングに関する新たな国家戦略を策定することを2021年7月末に発表した。GDPに変わるような、人々の暮らしの本質的な良さを測ることができる指標を創り出し、国家をより良い方向へ導こうというのだ。

オスロを歩く人々

政策の一つとして、まず政府は国民の正直な声を聞くことに取り組んだ。現在は、ノルウェー統計局が人々の生活の質に関する全国調査を行っている。2020年に最初の調査が行われ、その結果をもとにウェルビーイング戦略は更新される。2回目となる調査は2021年11月から開始される予定だ。

調査は、あらゆる社会的立場の人々の生活の質の違いや、社会的グループごとに異なる、公的政策へのニーズを詳細に明らかにする。たとえば、1回目の調査では、回答者の26%が人生の満足度が高いと述べている一方、若年層は年配層よりも、そして低学歴・低所得の人は高学歴・高収入の人よりも、今の暮らしに対する満足度が低いことがわかった。また、パンデミックにより国民の多くが生活の質(QOL)の低下や、孤独感、精神疾患などに悩まされていることも明らかになっている。

生活の質に関しては、今後高い状態を維持するだけでなく、困難に陥ったときにストレス状態から回復するための施策を考えていく。

同国の保健・介護サービス大臣であるベント・ホイエ氏は「社会的な格差を是正し、人々の健康を促進する公正な社会を実現するためには、多様な社会集団ごとに人々の声を多く集め、彼らの生活の質の向上には何が必要かを知る必要があります」と全国調査の意図を話している。

まさに政治の理想ともいえる民主的なアプローチで、人々のウェルビーングとは何かを丁寧に探り、その実現を目指す。経済性偏重から脱却する、ノルウェーのこのような政策がますます世界で主流となっていくことを期待したい。

【参照サイト】Ny nasjonal strategi for livskvalitet
【参照サイト】Norway announces new national wellbeing strategy
Edited by Kimika

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