イギリス西部の街ブリストルで、少なくとも70人の女性が街中に生えている数十本の木と結婚した。各々が異なるウェディングドレスを着て、「パートナー」と共に大規模な結婚式を行ったのだ。市内の獣医学校の再生医療の教授が、木と女性の「誓い」を紙に書き、それぞれに手渡した。
この異例とも言える出来事を報道した地元紙のブリストル・ポストは、盛大な結婚式の目的について「市内に建設が提案された166戸のアパートによる樹木の伐採に反対するものだ」と解説している。
Women marry dozens of trees to oppose Bristol building planshttps://t.co/oKyuQnW6rp pic.twitter.com/YMuvvljDal
— Bristol Live (@BristolLive) September 7, 2021
5,500万ポンド(約8億3,000万円)をかけたブリストル市内のアパート建設計画には、水辺が見える3階建ての高級アパート、および1階の商業スペースが組み込まれている。
ブリストル・ポスト紙の取材によると、今回の結婚イベントの主宰者であるシボーン・キーランス氏は、この取り組みについて「木は私たちの人生のパートナー」であることを示すものだと述べたという。また、今回の「花嫁」の一人で活動家のスーザン・ハケット氏は「ブリストルは、豪華な住宅よりも成熟した木を必要としています。」と話す。樹木はパートナーと言えるくらい大切なものだから、経済発展や住宅開発のためにむやみに伐採する建設計画を立てないでほしい、という主張だ。
今回の取り組みは、1970年代のインドで起きた「チプコ運動」にインスピレーションを受けたものである。チプコ運動とは、クリケット(※1)に使うスティックの材料として森の木の伐採権を州政府から得た企業に対し、インドの民族衣装サリーを着た農村の女性たちがヒマラヤの森の木を切らせないように、木に抱きついて抵抗した出来事のことだ。
※1 クリケット=イギリスやオーストラリアなど英連邦諸国で人気の、11人で行う野球のようなスポーツ
また、結婚式に加え、地元のThe Save Baltic Wharf Treesグループと、Bristol Tree Forumは、「今回提案されたアパートの建設計画の中では、伐採される予定の樹木の数と、それがいつ再生するかについて明確に書かれておらず、透明性に欠けている」と批判的な姿勢を見せている。
ブリストル市議会は、依然としてこの建設計画を検討している段階だが、計画の承認は降りていない。今回の「結婚」がどこまでの効果を発揮するのかはまだわからないが、住民たちの抵抗のあり方は今後も、世界の違う地域の人々へのインスピレーションとして残っていくだろう。
【参照サイト】Women ‘marry’ trees to highlight Bristol building plans
【参照サイト】70 women marry dozens of trees to stop 166 flats being built