爆弾や地雷がジュエリーに。“負の遺産”を宝物に変えるアップサイクル

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世界一の旅行先にも選ばれたことがある、美しい自然を誇るラオス。だが実は、歴史上最も空爆を受けた国でもあることをご存じだろうか。

ベトナム戦争が起こった1964年~1973年までの9年間に、ラオスでは平均して8分ごとに58万回もの空爆が行われ、200万トン以上もの爆弾が落とされた。現在でも、地雷や爆弾、飛行機の破損片といった負の遺産がラオス各地に残り続け、ラオス東部には8,000万個以上の地雷が埋まったまま放置されている。それらの戦争廃材が国土に占める割合は、なんと3分の1以上だ。

ODAや民間団体の手によって戦争廃材の回収は進められているものの、このままのペースで地雷の除去を進めた場合、完全に撤去するまでに125年もの歳月を要する。さらに、除去されていない地雷によって毎年死者が出ており、その数は2008年から現在までおよそ160人。そのうち半数が、地雷の中から金属を取り出して売ろうとしていた子どもたちだという。

そんな「戦争の負の遺産」をジュエリーに生まれ変わらせたのが、イタリアに拠点を置くブランド「NO WAR FACTORY」だ。立ち上げたのは、2人のイタリア人アーティスト・マッシモとセレナだ。

戦争廃材ジュエリー

左からマッシモとセレーナ、新たにチームに加わったリカルド

同ブランドは、ラオスの戦争廃材を加工して指輪やネックレス、ブレスレットなどのジュエリーやリサイクルバッグなどを、地域コミュニティと連携して製造、販売している。戦争廃材からアルミニウムを溶かして型に流し込み鋳造するまでは現地の職人たちが担い、それ以降の工程はイタリアの金銀細工職人の手によって仕上げ加工や装飾が施される。

戦争廃材ジュエリー

戦争廃材ジュエリー

「NO WAR FACTORY」が立ち上がったきっかけは、2017年にマッシモとセレナが、ラオスでもっとも不発弾が多いとされる地域に位置するバンナフィア村に訪れた際、村の住民たちが戦争廃材のアルミニウムをリサイクルして日用品やブレスレットを作っている様子を目にしたこと。村の職人たちの技術と、イタリアのジュエリー加工の技術を上手く組み合わせることで、戦争廃材をアップサイクルするだけでなく、村の収入を増やすことができると二人は考えたのだ。

ラオスでは核兵器や枯葉剤のような化学兵器は使用されておらず、同ブランドの製品には放射性元素が含まれていない。イタリアの安全テストでもEUの基準をクリアしており、安全面でも問題はないとされている。また、販売利益の10%は、地雷除去を目的とした国際NGO「MAG協会」および、飲料水を作るためのフィルターを現地に届けるチャリティー協会「INKforCharity」へと寄付される。

ラオス戦争廃材ジュエリー

ラオス戦争廃材ジュエリー

商品の原材料になっている戦争廃材──この負の遺産が一刻も早くなくなるように、ラオスや世界中でこれ以上爆弾が落ちないようにと、NO WAR FACTORYは祈り続ける。平和への想いが込められたジュエリーは、平和な世界につながるだろう。

※ NO WAE FACROEYは現在、日本のサイトでもクラウドファンディング中だ。興味のある方はこちらのサイトをのぞいてみてはいかがだろうか。

【参照サイト】NO WAR FACTORY
Edited by Tomoko Ito

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